【ナマケモノ】動物一の怠け者?ナマケモノの不思議な生態!

動物界屈指のゆるキャラ『ナマケモノ』。その知名度は日本でもずば抜けている。動物園ではなかなか出会えないのにも関わらず、かなり有名な動物。

近年では、芸能人などがナマケモノを飼育していたりとペットとしての需要も高いけれど、ナマケモノの特徴や生息地での生態について詳しいという人はあまり多くないようだ。

そこで今回は、ナマケモノの分類や種類、面白い生態についてピックアップしていこう!

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ナマケモノ

ナマケモノは、【哺乳綱異節上目有毛目ナマケモノ亜目】に属する哺乳類の総称。ナマケモノの生態を一言で表すなら「エネルギーを取らず・エネルギーを使わない」。そんな省エネ思考の環境にやさしい動物だ。

ナマケモノ

四肢はとても長く、全身が茶〜灰褐色の体毛で包まれている。全身の筋肉が少ないため、顔つきが垂れ下がっているのも特徴的だ。

ナマケモノは、生涯のほとんどの時間を木にぶら下がった状態で過ごす。食事や睡眠などの日常生活はもちろん、交尾や出産までも樹上で行うというから驚きだ。

ナマケモノの生息地

ナマケモノが生息しているのは、中央〜南アメリカの森林地帯。アマゾン川で有名なアマゾン熱帯雨林を始めとした「ジャングル」が彼らの生活の場だ。

ブラジルのジャングル

ナマケモノたちが生息するジャングルには豊富な自然が広がっており、数えきれない野生動物たちが集まっている。

中でもナマケモノが多く生息する「コスタリカ」は単位面積当たりの動植物種が世界でもっとも多い国とも言われており、地球上の生物のうち5%もの種がコスタリカに生息している。ジャングルは食料や住処に恵まれた環境であるとともに、ナマケモノを狙う天敵も多く存在しているという訳だ。

そのような環境の中、ナマケモノたちは生活の場を『樹上』という限られたスペースに移すことで生き残ってきた。無数に重なり生い茂る木々は、ナマケモノたちが地上や空の天敵から隠れるのに最適な場所となっている。

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ナマケモノの名前の由来

ナマケモノは動きの遅さに関してはトップクラスの実力を持つ。そうした「のんびりとした動き」が「怠けているよう」に見えることから『怠け者=ナマケモノ』と名付けられたと考えられている。

ナマケモノ

ただし、ナマケモノは「怠けている」のではなく、厳しい競争環境を生き残るために動きが遅くなったということを忘れてはならない。

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ナマケモノの英語と漢字表記

英語圏ではナマケモノのことを「sloth」と呼ぶが、この言葉にも「怠惰・ものぐさ」といった意味がある。生息地であるコスタリカでも「perezoso= だらけている、ぐうたら者という意味」で呼ばれているようだ。

ナマケモノ

ちなみに、ナマケモノを漢字で書く場合は、「怠者」ではなく「樹懶」と書く。「樹」に「懶」でナマケモノと読むが「懶」の訓読みは「ものぐさ」。ものぐさという言葉も「怠け者」を意味している言葉だ。

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ナマケモノの特徴

省エネ生活を送るナマケモノの身体にはエネルギーを使わないで生活できる仕組みが数多く備わっている。ここではナマケモノが独自の進化から得た身体の特徴について詳しくみていこう。

ナマケモノの体長と体重

種類や個体にもよるが、ナマケモノの平均的な体長は約40-75cmほどと言われている。ちなみに、ナマケモノと同じように樹上で生活する動物ではコアラが有名だが、コアラの体長は65-75cmほど。ナマケモノはコアラよりも少し小さな個体が多いようだ。

ナマケモノ

また、平均的なナマケモノの体重は4-9kg程度。一方、コアラの体重は4-15k。ナマケモノのほうがコアラよりも若干軽いということになる。

ただし、ナマケモノの筋肉量は自身の体重の30%ほどとも言われているので、筋肉質なコアラとは桁違いの筋肉しか持っていない。

こうしてみると、ナマケモノとコアラは似ているようにも思えるのだが、コアラは意外と俊敏であり凄まじい腕力を持っている。樹上で生活するという共通点はあるものの、ナマケモノとコアラは大きく異なる生態を持っているのだ。

長い前腕と鉤爪

ナマケモノは四肢がとても長いというのも特徴的だ。特に前肢は後肢に比べて極端に長くなっており、移動をすることなく広範囲の食料を掴むことができる。

さらに細部に注目してみると、ナマケモノの指先には鋭い鉤爪が付いていることがわかる。鉤爪というと凶暴な肉食性の動物を想像しがちだが、ナマケモノの鉤爪は獲物を狩るためではなく、木の枝にぶら下がるために存在している。

木の枝を「掴む」のではなく長い爪を「引っ掛ける」ことによって、体力を消耗せずに木にぶら下がることができるのだ。

苔の生える体毛

大きく成長したナマケモノには体毛に苔や藻が生えることがある。ナマケモノの体毛に生えた苔や藻はナマケモノが木に擬態する際のカモフラージュとなり、より天敵に見つかりにくくする効果があると考えられている。

ナマケモノ

また、体に生えた苔はナマケモノの食料となることもある。ナマケモノはわずかな食事で生きて行くことが可能な生物であるため、体毛に生えた苔すら貴重な栄養源となるのだ。

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ナマケモノと共生する蛾

ナマケモノの体毛には「ナマケモノガ(クリプトセス)」という蛾の仲間が生息している。ナマケモノガはナマケモノの身体に生えたトリコフィルスという藻を食料としているようだ。

ある仮説によれば、ナマケモノガはナマケモノが排便する際に卵を糞に産み付ける。地上に落ちた糞の中で生まれた蛾の子供たちは、糞を食べて成虫へと成長し、再びナマケモノの体毛の中へと戻るという。

ナマケモノガの一生が、ナマケモノの生活サイクルの中で完結している面白い事例だ。

ナマケモノは変温動物

ナマケモノは哺乳類としてはとても珍しい変温動物で、通常の哺乳類とは大きく異なる進化を遂げている。

犬も恒温動物

一般的な哺乳類は恒温動物であり、自らの体温を一定に保つ必要がある。私たちが氷点下を下回る気温の中でも36℃前後の体温を保てるのはその為だ。

一方で、変温動物は体温を保つことが出来ない場合が多く、体温は周囲の気温や水温に大きく影響を受ける。そのため、カメやトカゲなどの爬虫類は日光浴を行う必要がある。

つまり、ナマケモノは哺乳類でありながら周囲の気温によって体温が変動してしまう珍しい動物なのだ。

ナマケモノは変温動物となることで、体温を作る必要がなくなり日々のエネルギーの消費量が格段に少なくなった。つまり、エネルギー源となる食料を探し回る必要がなくなり、一日中安全な場所でじっとしていることが可能になったのだ。

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ナマケモノの鳴き声

ナマケモノの鳴き声はとてもかわいい。以下の動画にナマケモノの鳴き声が収録されているので要チェックだ。

このフタユビナマケモノは「アー」と鳴いている。

種類や個体によって鳴き声はかなり異なるようで「アー」と鳴く子や「ピュー」「キュー」と鳴く赤ちゃんも。

こちらは「キュー」と鳴いている。

鳴くことはほとんどないと言われるナマケモノであるが、ナマケモノの赤ちゃんは鳴くこともあるようだ。

ナマケモノの種類

現生のナマケモノは、フタユビナマケモノ科とミツユビナマケモノ科の2科に分類され、計5種が確認されている。

フタユビナマケモノ

フタユビナマケモノは、その名の通り指が2本のナマケモノ。前脚の指が2本、後脚の指が3本で、尾はほとんど無く痕跡程度であるのが特徴だ。

フタユビナマケモノ

ミツユビナマケモノに比べると気性が荒く、わずかに動作も素早いと言われている。

フタユビナマケモノ科は以下の2種に分類されている。

  • ホフマンナマケモノ
  • フタユビナマケモノ

ちなみに、この2種類のナマケモノは外見から判別することは専門家であっても困難と言われており、x線撮影によって頸椎の数を調べることによって判別することがあるそうだ。フタユビナマケモノは7個の頸椎を持っているが、ホフマンナマケモノには6個しか頸椎がない。

ミツユビナマケモノ

ミツユビナマケモノは、前脚・後脚共に指が3本のナマケモノ。ただし、ミツユビナマケモノ科のナマケモノは小さな尾を持っているため、指の数を数えることなくフタユビナマケモノ科と見分けることができる。

ミツユビナマケモノ

ミツユビナマケモノ科に属するナマケモノは以下の3種。

  • ノドチャミユビナマケモノ
  • ノドジロミユビナマケモノ
  • タテガミナマケモノ

一般的な哺乳類の頸椎は7個だが、ミツユビナマケモノには9個の頸椎が存在している。これによって首を270°も回転することができるのだ。

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ナマケモノの食事

ナマケモノの生態の中でも特に奇妙なのが食事事情。ここではナマケモノの食生活についてピックアップしてみよう。

ナマケモノは何を食べている?

ナマケモノが主食とするのは木の葉や木の実など。木にぶら下がった状態のまま周囲の葉や実を掴み取り、ゆっくりと咀嚼して食べる。また、飼育下においては果物なども食べるようだ。

1日の食事量は約8gほどと身体に比べてとても少ないのが特徴。8gというと1円玉8枚程度の重さだ。ナマケモノと同じく樹上で生活するコアラの食事量は1日約500gなので、8gという数字がいかに少ないかが分かる。

ちなみに、ナマケモノが属している異節上目には歯が退化している動物が多く、ナマケモノの歯もエナメル質を欠いた柱状の単純な形をしている。

省エネな代謝

ナマケモノは「エネルギー(食事)をほとんど摂らない代わりに、エネルギーをほとんど使わない。」という省エネな生態を持っている。

外気に合わせて体温が変化する変温動物であることは、体温を作り出すためのエネルギーが必要無いことを意味する。また、動きがゆっくりであることは外敵に見つからないというだけでなく、エネルギーを節約するために重要な要素なのだ。これらの要因が重なり合うことによってナマケモノの基礎代謝量は極端に低くなっている。

ちなみに、16世紀のヨーロッパでナマケモノが初めて紹介された際には、ナマケモノがあまりに動かず、食事を摂るところが確認できなかったことから、「ナマケモノは食料を必要とせず、風から栄養を吸収する動物」であると考えられていたという。

満腹で餓死することも!

ナマケモノは動きが遅い動物であるが、これは外見だけの話ではない。ナマケモノは食事後の消化にも時間がかかるのだ。

飲み込まれた食料は胃の中の微生物の働きによって約1ヶ月もの時間をかけて分解され消化される。この間もナマケモノは毎日食事を摂り続けているのだから空腹になるという訳ではない。

しかし、何らかの理由により消化に時間がかかってしまう場合がある。食事はしっかり摂っているのに消化が追いつかない。運悪く、こうした状況が続いてしまうことで「満腹なのに餓死する。」という現象が起きてしまうのだ。

ナマケモノの排泄は命がけ

食事を行うということは排泄を行わなければならない。ナマケモノは週に1回ほどのペースで排泄を行うのだが、この排泄のタイミングこそがナマケモノにとって命がけの瞬間なのだ。

出産や睡眠まで樹上で行うことで「天敵に見つからない」という特殊な能力を手に入れたナマケモノだが、どういうわけか排泄の際だけは木から降りるという行動をとる。

樹から降りたナマケモノ

もちろん、木から降りれば天敵から見つかるリスクも高まる訳だが、どうしても木から降りなければ用を足せないらしい。

リスクを冒してまで木から降りずとも、コウモリのようにぶら下がったまま排泄行えばいいと思うのだが、ナマケモノにも何かしらのメリットがあるのだろう。

自らがぶら下がっている木の根元に排泄を行うことで、木へ栄養を補給し共生関係を作り出しているという説もあるのだが、この説は一部では否定されており謎は深まるばかりだ。

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ナマケモノの天敵

ナマケモノの住むジャングルには、ナマケモノを捕食することによって生きている多くの動物達がいる。

地上では、ピューマやジャガーを始めとした哺乳類が歩き回り、上空からはオウギワシなどの肉食性の鳥類がナマケモノを狙っている。

ナマケモノは反撃の術を持ち合わせていないため、高い木に登ったまま天敵に見つからないように、じっとやり過ごすしかない。

多くの動物たちが敵に見つかったとしても逃げ切れれば勝ちであるのに対し、俊敏な動きができないナマケモノたちは、天敵に見つかったら最後、簡単に捕食されてしまうのだ。

パナマのコロラド島で行われた研究結果によると、オウギワシの獲物のうち、重量にして50%以上がナマケモノだったそうだ。

オウギワシ

野生下での寿命は10〜15年ほどと言われているが、人間の飼育下においては30年以上生きた個体もいるという。いかに過酷な環境で生活しているのかがわかる。

ナマケモノの生態

ナマケモノは見た目もさることながら、奇妙な生態でも知られている。ここでは、ナマケモノの謎の生態について見ていこう。

ナマケモノの移動速度

ナマケモノは、木の上で生活する動物でありながら、自重を支えることもままならない程に筋力が退化しているのが特徴だ。木から降りたナマケモノは地面を這いずるように歩くことからも、筋力の少なさがわかる。

そんなナマケモノの移動速度は通常時で時速16メートル。1分間に換算すると26センチしか移動しないのだ。

ナマケモノ

もちろん緊急時には急ぐこともある。ナマケモノの最高時速は時速120メートルほどと言われており、1分間で約2メートルしか移動できないことになる。

ナマケモノ

もし天敵に見つかったとしても、分速2メートルでは確実に捕まってしまうだろう。

木に擬態している

動きの遅いナマケモノは、天敵を撃退する攻撃力や、素早く逃げ切る運動能力を持ち合わせていない。その代わりに、ナマケモノは茶褐色の体毛を利用することで木に擬態することで敵をやり過ごすのだ。

日中は、前脚の間に頭部を埋める姿勢で丸くなり、枝に張り付いて睡眠をとる。遠目からは木の一部に見えるという訳だ。

ナマケモノの動きの遅さは、木に擬態して敵に見つからないようにするための生物としての知恵であるとも言えるだろう。

実は泳げるナマケモノ!

一部のナマケモノは泳ぎが得意だ。 ミツユビナマケモノたちが暮らすアマゾン近辺は、雨季と乾季がある地域。雨季になると多くの土地が冠水してしまう。

今まで森だったところが湖のようになってしまうため、ナマケモノたちは泳いで避難する必要があるのだ。

ナマケモノは体重が軽いだけでなく、筋肉量も少ない。さらに体内には植物をじっくりと発酵させてできたガスが詰まっている。これによって、ビーチボールのように浮力を得ることができる。

ただし、フタユビナマケモノ科は水に入っても頭が水上に出ないため、泳ぐことができないと考えられている。

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ナマケモノ祖先メガテリウム

今では超スローライフで目立たない生活を送るナマケモノだが、約一万年前まで生息していたナマケモノの祖先は超巨大な体格の持ち主だった。

メガテリウムの復元図
PublicDomain

メガテリウムと呼ばれるナマケモノの祖先は、全長 6~8m、体重3tに達する巨大生物。ナマケモノのように木に登るということはなく、地上を歩いて木の葉や土の中にある植物の根などを掘り起こして食べていたと考えられている。ナマケモノらしさはほとんどないが、この頃から指先には長い鉤爪が付いていたようだ。

メガテリウム
PublicDomain

生息していた時期は約164万年~1万年前ということなので、アメリカ大陸に進出した人類とも遭遇していた。狩猟の対象となったことで絶滅してしまったと考えられている。

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今回はナマケモノの身体や生態の不思議についてピックアップしてみた。

ナマケモノ

一日中、ぐーたらと生活しているナマケモノ。人間たちからも「怠けている」なんて不名誉な名前を付けられた動物であるが、その正体は過酷な環境を生き残る術を身に着けた賢い生物だったのだ。

生活のために不必要な物を大量に作り、毎日をせわしなく過ごしている人間たちも、彼らの省エネな行動を見習うべきなのかもしれない。

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