世界に800種を超える種類が生息していると言われるイソギンチャク。日本でも沖縄から北海道まで、50種類以上のイソギンチャクが確認されている。
最近ではアクアリウムの熱帯魚としても人気が高く、イソギンチャクを飼育している人も増えているんだとか!

そこで今回は、日本近海から世界の深海まで世界各地で見つかった様々なイソギンチャクの種類を画像とともにチェックしていこう。

面白い生態をもつイソギンチャクや、鮮やかで綺麗なイソギンチャク、触ると死に至るほどの危険なイソギンチャクまで、24種のイソギンチャクの代表種をピックアップだ!
イソギンチャクとは
イソギンチャクは『刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目』というグループに属する無脊椎動物の総称。刺胞動物なので、クラゲやサンゴなどもイソギンチャクの仲間ということになる。

口の周りに毒のある触手を持っているのが特徴で、岩などに固着して生活する。この触手を使って魚などの大きな生物を丸呑みにする獰猛なイソギンチャクも多い。

イソギンチャクはサンゴのように動くことが出来ない生物だと思われがちだが、実際には時速数㎝のスピードでの移動が可能であり、中には海中を泳ぐイソギンチャクも存在している。
イソギンチャクの種類
イソギンチャクの種類数は推定800~1200種と言われており、北は北極海、南は南極の氷棚の下にまで世界各地で生息地が確認されている。

熱帯~温帯の海では特に種類も豊富で、日本でも沖縄県を中心に北海道の冷たい海にまで様々なイソギンチャクが生息している。

イソギンチャクの中には「体内に住まわせている藻の光合成によってエネルギーを得る」「ヤドカリの殻に付着して生活する」「クラゲの身体に寄生する」などの面白い生態を持ったイソギンチャクも多い。
綺麗なイソギンチャク
ミドリイソギンチャク
ミドリイソギンチャクとは、鮮やかな体色が特徴の日本近海固有のイソギンチャク。別名「モエギイソギンチャク」とも呼ばれ、直径10㎝程度の円筒形の身体を持つ。

ミドリイソギンチャクの触手の色は、緑色からピンク色、赤褐色まで様々。かなりエキゾチックで綺麗なイソギンチャクだ。
ヒダベリイソギンチャク
ヒダベリイソギンチャクは、世界各地の海に生息するメジャーなイソギンチャクの一種。日本では東北地方から北海道にかけての寒流域の浅い海に多く生息している。

ブロッコリーともヤシの木とも例えられる植物のような姿をしており、1000本以上の触手を持つ大型個体も多数確認されている。
体部は白・ピンク・オレンジ・赤・グレー・茶色など、様々なバリエーションが確認されており、「最も美しいイソギンチャク」と称されることもある。
Anthothoe albocincta
オーストラリアからニュージーランドの海に生息しているAnthothoe albocincta。最大直径3㎝程度と小型ではあるが、大量の触手を持っているのが特徴。

白い縞模様が入った身体から現地では『white-striped anemone(=白しまイソギンチャク)』とも呼ばれている。
gorgonian wrapper
gorgonian wrapperは、インド洋の中央海域に生息するイソギンチャクの一種。

100~130本ほどの触手を持っており、シマウマのような模様が特徴的だ。研究があまり進んでいないためか日本国内では和名や生態などの情報がほとんど見つからない種でもある。
飼育で人気のイソギンチャク
センジュイソギンチャク
センジュイソギンチャクは、日本では沖縄以南のサンゴ礁に広く生息するイソギンチャクの一種。細長い触手が高密度で生えているため魚の隠れ家にもなっている。

比較的丈夫なことから飼育でも人気があるが、本来は1メートル程度にまで成長する大型のイソギンチャクであるため、ネット通販では小型の個体が売り切れになることも多い。
シライトイソギンチャク
シライトイソギンチャクは、密度の高い細長い触手を持つイソギンチャク。海水魚の飼育でも人気が高い種でネット通販でも購入することが出来る。

ペットショップでは、「シライトイソギンチャク」と見た目が似ている「チクビイソギンチャク」という種がシライトイソギンチャクの名称で販売されていることも多い。
サンゴイソギンチャク
サンゴイソギンチャクは、太く短い独特な触手をもつ大型のイソギンチャク。触手の先端は玉ねぎのように膨らみ、先端がピンクに染まっているものも多い。

イソギンチャク飼育の初心者向け個体としても知られており、アクアリウムでも人気が高い。
ニチリンイソギンチャク
水深10m以下程度の浅い海に生息するニチリンイソギンチャク。一般的なイソギンチャクが柱のような形をしているのに対し、ニチリンイソギンチャクは放射状に広がる無数の触手を持つのが特徴だ。

開いた触手環の直径は最大でも15cmほどで、飼育も比較的容易なことからアクアリウムでもペットとして人気が高い。
魚と共生するイソギンチャク
ハタゴイソギンチャク
ハタゴイソギンチャクは、カクレクマノミが共生することで有名なイソギンチャク。

世界最大級のイソギンチャクとしても知られており、自然界では1m近く広がる巨大な個体も生息する。
ハタゴは「旅館」を意味し、カクレクマノミなどの生物が出入りする様子が名前の由来になっている。

ハタゴイソギンチャクは、触手を横から見るのと上から見るのではずいぶんと印象が異なる。口盤が波打つと全く違う生物のように見えることもある。
ジュズダマイソギンチャク
ジュズダマイソギンチャクは、日本の沖縄からオーストラリア、東アフリカの沿岸などに生息するイソギンチャク。

触手の長さは長くて5㎝程度で、数珠のように膨らみが連なった形状をしている。ぱっと見ではゴカイなどの生物のように見える。

通常は、サンゴ礁や岩礁の縁に付着し、強い海流の中に生息している。長い触手はクマノミやカニなどの貴重な隠れ家にもなっている。
毒を持つ危険なイソギンチャク
ウンバチイソギンチャク
沖縄などの日本のサンゴ礁海域に生息するウンバチイソギンチャク。「ウンバチ=海の蜂」と呼ばれるように猛毒を持つイソギンチャクとして警戒が呼びかけられている。
昼間は触手を縮めることから岩についた海草のようにしか見えず、気づかずに踏んでしまうと火傷のような傷と激しい痛みを伴う。過去には急性腎不全による死亡例もある危険生物だ。
ハナブサイソギンチャク
ハナブサイソギンチャクは、沖縄をはじめとした暖かい海のサンゴ礁の砂地に生息している大型のイソギンチャク。体長は直径で30㎝に達する。

神経毒である触手の刺胞はとても長く、刺されてしまうと火傷のような腫れを伴う酷い痛みに襲われ、最悪の場合は呼吸困難に陥り、死に至る可能性もある。
子供が遊ぶような浅瀬にも生息するため十分に注意が必要な危険生物だ。
カザリイソギンチャク
カザリイソギンチャクは、日本近海にも生息する危険なイソギンチャクの一種。ある程度の深さがある海に生息するため出会う機会は少ないが、毒性が強いため長い触手に触れてしまうと激しい痛みをともなうそうだ。

日中は触手を収縮して丸まり、夜になると長く美しい花のような触手を広げる。
スナギンチャク
スナギンチャクは花虫綱スナギンチャク目というグループに属する海洋生物。見た目はイソギンチャクに似ているが、分類的にはイソギンチャクとは異なる生物だ。

中心の共肉と呼ばれる部位からそれぞれの個虫が立ち上がる「群体性ポリプ」という形態を持っている。
スナギンチャクの一種であるイワスナギンチャクは、海産生物最強の毒素とまで言われるパリトキシンを粘液にもつ種も存在している。
過去には熱帯魚店から購入してきたスナギンチャクの毒素が空気中に放出され、スナギンチャクに触れてすらいない隣の部屋の家族にまで健康被害が発生した事例もある。
面白い生態のイソギンチャク
オヨギイソギンチャク
オヨギイソギンチャクは体長5㎜~10㎜ほどの超小型のイソギンチャク。日本の太平洋沿岸からアフリカ沿岸まで広く生息しており、普段は海草に貼り付いている。
小さな身体には、身体より大きな3㎝ほどの触手を大小合わせて40~50本ほど持っており、触手を振り回して泳ぐことが出来る。

各触手の付け根には環状筋があり、天敵などからの刺激を感知すると、環状筋を急激に縮めることで触手を切り離して逃走する。
触手の細胞内には藻類が住んでいるため、黄褐色や紅色になっていることもある。
コモチイソギンチャク
コモチイソギンチャクは、神奈川県以北の日本近海に生息する直径5㎝ほどのイソギンチャク。

口から排出した卵を自身の体のくぼみに植え付けるという特殊な繁殖方法を持つことから『子持ちイソギンチャク』と呼ばれている。
幼体は母体の体壁に張り付いたまま成長し、かなり大きくなってから母体を離れて、周囲の岩上に付着する。
ヤドカリイソギンチャク
ヤドカリイソギンチャクは、ヤドカリの殻に付着することで、移動能力とエサの食べ残しを得ることを可能にした奇妙な生態のイソギンチャクだ。

イソギンチャクを殻に取り付けることによって、イソギンチャクの刺胞が武器となるため、ヤドカリにとってもメリットがある共生関係となっている。
ヤドカリが貝殻を変えるタイミング来ると、ヤドカリは脚を使って丁寧にイソギンチャクを外し、新しい貝殻に取り付けてから自身も引っ越すそうだ。
コンボウイソギンチャク科ヤドリイソギンチャク
鮮やかな赤い身体と12本の肉厚な触手が特徴的なヤドリイソギンチャク。コンボウイソギンチャク科に属する一種だ。

イソギンチャクは、胚→プラヌラ幼生→稚イソギンチャクと変態を続けながら姿を変えることで知られているが、ヤドリイソギンチャクは幼生のときにクラゲに寄生することが分かっている。
通常は足盤で岩などに付着するが、寄生するときには触手を使って宿主に食いついて生活するようだ。
テンプライソギンチャク
テンプライソギンチャクは、2018年に新種として発見された「エビの天ぷら」のようなイソギンチャク。オレンジ色のカイメンの身体を貫通しイソギンチャクが生えているという奇妙な共生生活を送るイソギンチャクだ。
テンプライソギンチャクは刺激を受けるとカイメンの出水孔に隠れることができ、カイメンはイソギンチャクの刺胞を利用することで天敵であるウミウシから身を守ることができる。
セトモノイソギンチャク
セトモノイソギンチャクは、深海に生息する奇妙な形のイソギンチャクだ。見た目が瀬戸物(陶磁器)に似ていることが名前の由来になっている。

毒々しい花びらのような見た目を持っており、深海性のイソギンチャクの中では珍しく和名が付けられているが、詳しい生態は未だに分かっていないようだ。
フウセンイソギンチャク
セトモノイソギンチャクの仲間で、東北地方の深い海に生息するフウセンイソギンチャク。
天敵であるヒトデが近づいてくると、胃腔内の海水を口から噴射することでジャンプをして逃げるイソギンチャクとして有名だ。生息地では予想以上に素早く泳ぐ姿が何度も撮影されている。
変なイソギンチャク
ウメボシイソギンチャク
ウメボシイソギンチャクは、日本近海に生息する赤茶色のイソギンチャク。潮が引いてしまうような環境でも生きていけるほど、高温や乾燥に強い耐性を持っている。

成体は約96~192本の触手を持っているが、潮が引くと触手を一斉に縮めて梅干しのような見た目になる。この見た目からウメボシイソギンチャクと名付けられた。

ウメボシイソギンチャクは、1匹だけでも繁殖が可能な『単為生殖』を行うことも分かっており、口から自分のクローンである小さな個体を吐き出して繁殖する。
ハエジゴクイソギンチャク
食虫植物のハエトリグサにとても似ている奇妙な姿を持つ「ハエジコクイソギンチャク」。英名でも『Venus flytrap sea anemone =ハエトリグサイソギンチャク』の名で知られている。

体長は15㎝程度で、メキシコ湾やアフリカの沖合の深海1000〜2000メートルに生息している。
ハエトリグサと同じように、触手に刺激を感じ取ると触手を閉じて獲物を捕食する。
ムシモドキギンチャク
細長い半透明の触手が特徴的なムシモドキギンチャク。全長は24㎜、身体の直径は4㎜ほどの小型のイソギンチャクだ。

ムシモドキギンチャクは、かなり古くから砂地での生活に適応してきたため、足盤が球体に変化している。上から見るとイソギンチャクというよりもクモヒトデのようにも見える。