アザラシといえば、動物の中でも一、二を争うほどの可愛い生き物。ゴマフアザラシの赤ちゃんの画像なんて見てしまった日には、可愛すぎて悶絶してしまう。

アザラシといえば、色んなマスコットキャラクターのモデルとしても起用される大人気の生物だ。
しかし、今回の主役ヒョウアザラシは『アザラシ=可愛い』の概念を根底から覆すほどのトラウマパワーを持った恐ろしい猛獣だ。

これが、問題のヒョウアザラシ…。どこからどうみても肉食獣そのものだ。
噛み付くぞと言わんばかりのキバと巨大な顎は、『アザラシ=ゴマフアザラシ』という価値観に洗脳された我々にはなかなか堪えるものがある。
今回は、アザラシ界の異端児『ヒョウアザラシ』の魅力を徹底的に紹介したい!
ヒョウアザラシ
ヒョウアザラシは、食肉目アザラシ科ヒョウアザラシ属というグループに分類される海洋棲哺乳類。可愛らしいイメージが強いアザラシの仲間だけど、その姿は肉食生物全開のオーラを発している。

そもそもアザラシは『食肉目』に含まれる動物なので、遺伝的に「ヒョウやライオン、クマなどと近い生物」だということが分かっている。
つまり、「ヒョウアザラシが肉食動物っぽい」のではなく「ヒョウアザラシ以外のアザラシが肉食動物っぽくない」のだ。

牙やら頭部やらの肉食獣感がすごいので「ヒョウアザラシ」と呼ばれていると思ったが、名前の由来は「身体の側面にあるブチ模様がヒョウみたいだから」という理由だそうだ。
ヒョウアザラシの生息地
ヒョウアザラシの生息地は南極大陸周辺。流氷や孤島など、南極をぐるりと囲むように広く生息しているようだ。

アザラシの仲間は北極に生息するというイメージがあるけれど、実際には北極圏から南極まで世界各地に生息している。

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中にはハワイモンクアザラシという熱帯に生息する種類も存在している。
ヒョウアザラシの骨格は、完全にヒョウのそれ
ヒョウアザラシの骨格は名前に劣らずヒョウそのもの。アゴには鋭い歯が並び、開口角度も他のアザラシに比べると異様に大きい。

PublicDomain
その姿はまさにヒョウそのもの。ヒョウの骨格標本と見比べてみても、どちらがアザラシのものか素人では見分けが付かないほどだ。

Klaus Rassinger und Gerhard Cammerer CC BY-SA 3.0
ペンギンを捕食する肉食獣
北極に生息するアザラシは、シャチやホッキョクグマ(シロクマ)などの天敵に捕食されるものも少なくない。ホッキョクグマの食料の9割はアザラシとも言われている。
しかし、南極で暮らすヒョウアザラシには、ほとんど天敵という天敵がいないそうだ。

ヒョウアザラシは他の生物に襲われないばかりか、ペンギンや海鳥などの鳥類、他のアザラシなどを襲って食べることもあるという。

ヒョウアザラシは、南極における『上位捕食者=北極のシロクマ的な存在』として、食物連鎖の上位に君臨している。
しかし、主食がペンギンなどの鳥類という訳でもないようで、基本的にはナンキョクオオアミなどのプランクトンやイカなどを食べている。
意外と巨大…
ヒョウアザラシの大きさはオスで2.8~3.3m。メスはもっと大きく全長2.9~3.6mにも達する。体重は500Kgを超えることもある巨大生物だ。

アザラシの中ではメスの方が大きくなる珍しい種でもあるらしい。ちなみにメスの妊娠期間は270日程度とかなり長めで、10月~11月頃に1頭だけ赤ちゃんを産む。

基本的に人間が近寄っても変に威嚇しない限り襲ってくることはないと言われているが、2003年にはダイビング中の海洋学者が突然噛みつかれて死亡するという事故も起きている。
そしてニョロニョロと長い…
ヒョウアザラシの『なんか違う感』の原因となっているのが、このニョロニョロと長い体つき。

アザラシと言われなければ、新種の生物か、伝説の未確認生物のようでもある。

このスマートな体つきのおかげもあって、アザラシの中ではトップクラスの遊泳力を持つとされている。一説によると最大時速40kmの速度で泳ぐのだとか。
ヒョウアザラシが怖すぎる
ヒョウアザラシと他のアザラシたちの最大の違いは、やっぱり見た目の怖さ。

無表情な感じがなんとなく怖い…。

何も考えてい無さそうな顔をしているけど実は頭がいいらしく、最近の研究では、捕らえた食料を後から食べるために保存食として隠している様子なども確認されているらしい。

中には獲物の身体だけを上手に食べて、頭部は捨ててしまうというグルメなヒョウアザラシもいるとのこと。見かけによらず贅沢なヤツだね!
アザラシっぽさは可愛らしい
ヒョウアザラシが怖すぎる件について色々と書いてきたけど、慣れてしまえば可愛くも見えてくるもの。散々言ってゴメンな、ヒョウアザラシ。

日光浴を楽しむ姿なんて、ゴマフアザラシのキュートさにも負けてないぞ!と全世界の人々に伝えたい。

…というか、ヒョウアザラシが怖いんじゃなくて、ゴマフアザラシが可愛すぎるだけ。
