名前のインパクトの強さからカメ達の中でも一際注目を集めるワニガメ。ニュースなどでは危険生物として注目されがちなワニガメだが、普段の彼らはどんな生活を送っているのだろうか?
今回は意外と身近なワニガメたちの生態をピックアップしてみよう!
ワニガメ
カメ目カミツキガメ科ワニガメ属というグループに属する亀の一種。恐竜のような顔つきにズッシリとした体型が特徴的だ。英語でも”Alligator snapping turtle”と狂暴なワニを彷彿させる名前で呼ばれている。
ワニのような大きな口を使い、口の近くにあるものは何でも噛み砕いて食べてしまう驚異的な顎の持ち主だ。
日本の河川などで発見されるたびに「危険生物」として話題になるほか、特撮映画「ガメラ」のモデルとなったカメとしても知られている。
ワニガメの生息地
ワニガメの故郷は北米大陸の南東部。アメリカ合衆国では河川や水路、湖や湿原など広い地域に生息している。
川底に泥が溜まり水生植物が生い茂った、人間からみれば綺麗とは言い難い場所を好むようだ。
ワニガメは完全水生であるため、日本の河川で見かけるカメのように日向ぼっこ(甲羅干し)を行うこともなく、川底でひっそりと暮らしている。
ワニガメの大きさ
標準的なワニガメの個体では、最大甲長80cm、最大体重110kgほどに成長する。個体によっては150kgを超えることもあるそうだ。
カメは頭や尾が伸び縮みするするため、通常は甲長(甲羅の長さ)で測定する。つまり、ワニガメの実際の体長では1mを超える大きさに育つということだ。
ちなみに、世界最大のカメは海ガメの一種である「オサガメ」で、甲長2mは達する。ワニガメも大きいが、倍近く大きいカメが存在しているのだ。
ワニガメは何を食べる?
ワニガメは雑食性で口の近くにあるものは何でも食べることで知られている。魚類、両生類、爬虫類をはじめ、時にはアライグマなどの水辺に寄ってくる哺乳類や、他のカメまで捕食するのだ。
ワニガメにとっては獲物の生死は関係なく、川底に沈んだ魚の死骸なども強靭な顎で噛み砕いて飲み込む。
また、ワニガメの身体は暗い褐色で水の中では目立たず、舌は明るいピンク色をしている。これにより、舌を食べ物だと間違えて寄ってきた魚を狩ることもできるようだ。
ワニガメの擬態
カメの中でも凶暴な部類に入るワニガメだが、彼らの生活は至って地味だ。基本的に濁った見通しの悪い水中で動き回ることなくジッと獲物を待って過ごす。ワニガメのゴツゴツした甲羅と灰褐色の身体は近くで見ても岩にしか見えないだろう。
さらに、ワニガメは一生のほとんどを水の中で過ごすため、成長した個体の甲羅には藻が発生することが多い。甲羅を覆う藻は泥の中でのカモフラージュには好都合なのだ。
ワニガメの寿命
カメといえば長寿な生物として有名だが、ワニガメも例外ではなく、寿命は80-100年と言われている。
ワニガメは自分よりも大きなワニ以外に天敵が存在しない。生態系の中で上部に位置していることも平均寿命が高い要因の一つだ。
ちなみに飼育されたワニガメの場合は、寿命が短くなる傾向にあるようだ。個体によって差が大きいが、20-70年ほどで生涯を終えると言われている。
ワニガメとカミツキガメの違い
ワニガメと並んで危険なカメとされるのがカミツキガメという亀。カミツキガメもワニガメ同様に強靭な顎を用いて獲物を捕らえる大型のカメであり、似ているようにも見えるが、実際には全く異なる生物だ。
ゴツゴツとした甲羅を持つワニガメに対して、カミツキガメの甲羅はなめらかになっている。また、カミツキガメの方が顎が大きく開き、自分の頭部よりも大きなものにも噛みつくようだ。
さらに、ワニガメの生息域が北米大陸の南東部であるのに対し、カミツキガメは中央アメリカからメキシコまでの幅広い地域が生息域だ。
ワニガメの危険性
ワニガメといえば、たびたび日本の河川などで発見され、危険な外来生物として注目される事がある。過去には警察が出動する騒ぎになったほどだ。見つかるワニガメのほとんどが、ペットとして飼われていた個体が人間の手によって放流され、環境に適応し野生化した結果だ。
ワニガメの顎の力は300〜500kgと言われており、噛まれてしまえば大人の指でも簡単に噛みちぎられてしまう。これだけ見ればかなり危険な生物と言えるだろう。
ただし、ワニガメは基本的に水から出てくることがなく、池や沼などの濁った水を好む。つまり、人間から近寄らない限り、積極的に襲ってくることもない。
とはいえ、水の中でうっかり踏んでしまった場合などはガブリと噛みつかれる可能性もあるだろう。もしワニガメと思われる生物を見かけた場合は、すぐに最寄りの専門機関へ連絡しよう。