【氷山空母ハボクック】氷を切り出して戦艦に…湖に沈んだ幻の超兵器とは!

時は第二次世界大戦の真っ只中。未だ大西洋横断飛行すらも実現していない時代――。

各国が巨大戦艦や潜水艦、大西洋横断飛行が可能な航空機の開発を行うなか、当時ドイツと交戦状態にあったイギリスではとんでもない兵器の開発計画が進められていた。

氷山を改造して巨大空母を作る――。

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28万個もの氷塊を組立て、全長600mの氷の船舶を作るという、子供でも思いつかないような超巨大兵器の製造計画が着々と進行していたのだ。

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氷山空母「ハボクック計画」

1943年――。カナダにあるパロリシア湖で、長さ18mの新型兵器の試作機が作られていた。

その新型兵器とは、船体が氷山で出来ている自走可能な巨大空母。実現していれば世界大戦の結末を塗り替えていたかもしれない超巨大兵器だ。

当時のアメリカ合衆国の空母「ヨークタウン」
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第二次世界大戦中、トンデモ兵器を数多く発明したことで知られるイギリスの『ジェフリー・N・パイク』は、「タイタニック号をも沈没させた氷山は魚雷や焼夷弾をもってしても破壊不可能」という報告に目をつけ、氷山空母の建造計画『ハボクック(ハバクック)計画』を立ち上げた。

計画の全容はこうだ――。

PexelsによるPixabay

『カナダなどの北極圏から手ごろな氷塊28万個を南方へ運び、鉄骨の骨組みへとくっつけて全長600mの空母を建設する。

氷山の上には航空機の離着陸が可能な滑走路を作り、150機の双発爆撃機や戦闘機を搭載、空母が攻撃を受けたときのために4.5インチ対空砲も40基搭載する。』

あまりにも馬鹿げて聞こえる計画だが「損傷しても海水を流し込んで凍らせるだけで復旧できる」というアイデアは、鉄のような建造資材が不足し、ナチスドイツの潜水艦に脅かされていたイギリスにとっては理想的に見えたようだ。

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1942年――。ハボクック計画は当時の首相チャーチルの承認を受け、7000万ドルの予算と8000人の人員が投入された「イギリス・アメリカ・カナダ」の3国共同一大プロジェクトに発展した。

どう考えてもすぐに頓挫しそうな計画であるが、ジェフリー・パイクとハボクック計画は数々の難題を突破していくことになる。

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氷山空母に立ちはだかる数々の難題

最初に立ちはだかる壁はやはり強度だ。「氷山は破壊不可能」という考えが当時の常識だったとしても、氷をライフルで撃てば簡単に破壊できることは明白だった。

そこでジェフリー・パイクは、パイクリートと呼ばれる素材を氷山空母のために開発した。パイクリートは、14%の木材と紙くずに86%の水を混ぜ合わせた複合材料で、高強度で通常の氷よりも溶けにくいという性質を持っていた。

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パイクリートの開発にともない、氷山空母計画はさっそくの路線変更。氷塊を使うのではなく、このパイクリートを大量生成して氷の空母を作る計画へと変更された

しかし、パイクリートといえども所詮は氷。時間が経てば溶けてくることは避けられない。そこで氷山空母の中には冷凍機を設置し、船全体を冷やしながら航行する構想になった。

動力源は外部に取り付けた26台のディーゼルエンジンで発電機を回し、左右の電動モーターを制御することで時速18mでの航行を可能とする予定だった。

もし、ハボクック計画の構想通り氷山空母が実現していたとしたら…どれだけ破壊しても水をかければ修復するという『不沈空母超巨大移動型要塞』が完成していたことだろう。

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ハボクック計画は中止へ…

完璧な兵器に見えた氷山空母だが、みんな薄々気づき始めていたようだ。

普通に空母をたくさん作ったほうが安い…。

イギリス海軍の空母フューリアス PublicDomain

実はこのハボクック計画、当初は動くことが出来ない海上基地…つまり氷山の人工島を作ろうという計画だったのだ。

しかし、欲張ってしまったのか、それとも計画の承認を得るためのアピールだったのか自走式の空母を作る計画へとなってしまった。

結局、コストがかかりすぎる点、航空機の開発が進歩を遂げ航続距離が伸びたこと、レーダーの性能が上がり海上の敵戦力の察知が可能になったことなどから氷山空母は無用となってしまい、計画の承認からわずか1年ほどで中止が言い渡された。

こんな海上基地であれば実現できたかもしれない? PublicDomain

パトリシア湖で建造された試作機は冷却装置などを外され、残骸は湖底へと投棄された。1984年頃には湖底に沈んだ朽ち果てた氷山空母の残骸が確認されているという。

ちなみに…

なんともカッコ悪い感じで中止してしまったハバクック計画だが、ハバクック計画の名前の由来となったのは、旧約聖書の一部であるハバクク書(book of Habakkuk)と言われている。なんだかカッコいい!

しかし、当時のハバクック計画書には「Habbakuk」と記載されているが、英訳聖書の記載は「Habakkuk」…。完全なスペルミスだったようで、しかも後年の資料ではしれっと書き直されてるらしい。

ちなみに現在では氷山は見えてる部分の9倍くらいが海中に沈んでいることも分かっている。

当時の航空機が空母から飛び立つのに滑走路は海面から15mは高さが必要だったため、氷山空母の船底は150mほどの高さにする必要があった。そもそもサイズ的にも氷山空母は現実的ではなかったようだ。