カニといえば、高級食材である毛ガニやタラバガニが有名ではあるが、もちろん食用ではないカニのほうが圧倒的に多い。そこらの身近な川から人間がまだ到達することのできない深海にまで、たくさんの種類が生息していて、その数は世界各地に7000種以上とも言われている。
日本には1000~2000種程度の種類がいると言われているけれど、文献によってその数はバラバラ…。おそらく正確な数がわかっている人はいないんじゃないだろうか…。
今回は、そんな謎めいたカニの世界にズームインだ!食用の蟹から深海に潜む巨大蟹まで、様々な蟹の種類をちょっとした雑学とともにピックアップしていこう!
- 1 カニの種類一覧32選
- 1.1 タラバガニ
- 1.2 ズワイガニ
- 1.3 ケガニ
- 1.4 ケブカガニ
- 1.5 スベスベマンジュウガニ
- 1.6 スベスベケブカガニ
- 1.7 ワタリガニ(ガザミ、イシガニほか)
- 1.8 アサヒガニ
- 1.9 ハナサキガニ
- 1.10 サワガニ
- 1.11 モクズガニ
- 1.12 チュウゴクモズクガニ
- 1.13 アカテガニ
- 1.14 ベンケイガニ
- 1.15 スナガニ
- 1.16 オサガニ
- 1.17 コメツキガニ
- 1.18 シオマネキ
- 1.19 マメコブシガニ
- 1.20 アシハラガニ
- 1.21 ミナミコメツキガニ
- 1.22 イソガニ
- 1.23 イワガニ
- 1.24 ショウジンガニ
- 1.25 キンセンガニ
- 1.26 ヘイケガニ
- 1.27 クリスマスアカガニ
- 1.28 ウモレオウギガニ
- 1.29 トラフカラッパ(ハズカシガニ)
- 1.30 メガネカラッパ
- 2 深海に生息するカニ
カニの種類一覧32選
タラバガニ
食用のカニとして人気の高い「タラバガニ」。しかし実際はカニではなくヤドカリの仲間で、普通カニの脚はハサミを含めて10本が、タラバガニは8本しかないように見える。※厳密には第五脚が極端に小さい。「カニの王様」なんて呼ばれているけど食べれる脚が2本も少ないのだ!!
ズワイガニ
日本海沿岸からカナダ周辺の北太平洋、オホーツク海など世界各地に生息圏を持つ大型のカニ。大きいオスだと脚を広げた長さが70cmにも達する。驚くべきはその生活圏の広さ。浅いところだと水深50mくらいの海底で生活しているが、水深1200mの深さでも難なく暮らすことができる。
ちなみに、マツバガニ、エチゼンガニ、セイコガニなど地域毎にブランド名で呼ばれることもあり、そういう種類のカニがいると勘違いされがちだけど、実際は全てズワイガニなのだ!
ケガニ
全身毛だらけなのに食用としてはかなり人気の異色の蟹。全身の毛は水流の流れを察知するために生えているなんて説もあるが詳しいことはわかっていない。日本において食用とされ始めたのは1934年ごろからで、缶詰としての利用が多かったが徐々に市民権を得てきた実力派。それ以前は食用よりも肥料として利用されることが多かったのだとか…。勿体無い。
ケブカガニ
ケガニなんて、カニの世界では全く毛深くないという事実をご存知だろうか…?カニ界の毛深さNo1といえばこいつ。その名もケブカガニ。ほぼほぼ毛である。サイズ的には小さくアクアリウムなど個人で飼育することもできる。
スベスベマンジュウガニ
毛深い蟹がいれば、もちろんスベスベの蟹もいる。その名もスベスベマンジュウガニ。マンジュウというから美味しいのかと思えば、なんと有毒生物。日本沿岸にも多数生息しているため、過去には誤って味噌汁にしてしまい中毒症状に陥った事故も発生している。
スベスベケブカガニ
スベスベなのか毛深いのかよくわからない名前だけど、実際は想像以上のスベスベ。ケブカガニ科の中でもスベスベの種類だからスベスベケブカガニなんだとか。
ワタリガニ(ガザミ、イシガニほか)
ガザミというカニの総称が、一般的にワタリガニと呼ばれている。地域によってはイシガニをワタリガニと呼ぶ例もある。昔はあのタラバガニよりも食されていたというほどポピュラーな食材ではあったが、近年では乱獲による漁獲高の減少により国内では既に高級食材になりつつある。
アサヒガニ
カニなのにカニ歩き(横移動)ができないカニ……。そのため移動時は前後移動をするが、前に進むことも少ない。そのため砂泥に潜って貝などを捕食する。英語ではFrog clabと呼ばれることがあり、その理由はカエルのように縦長で前かがみになる姿がカエルのようにみえるからなんだとか。
ハナサキガニ
「カニ」と名前がつけられているが、こちらもヤドカリの仲間である。ちなみにタラバガニとは親戚。花咲の由来は漁獲地である北海道根室市花咲港の「花咲」から取った説と、ゆでた時に花が咲いたように赤くなる見た目から取った説が存在している。前述した根室市では「鉄砲汁」というハナサキガニを使用した郷土料理が昔から食されていることからも、個人的に名づけの由来は根室説を推したい。
サワガニ
日本にしか生息しないカニ。theジャパニーズカニ。生まれてから死ぬまで川などの淡水域で過ごす淡水ガニとして知られている。分布としては青森県からトカラ列島までとされており、藻や昆虫、カタツムリ、ミミズなど、なんでも食べてしまう雑食。料理としては丸ごと揚げた唐揚げや佃煮は絶品。ただし生身や不十分な加熱状態で食べると感染症にかかるリスクがあるので要注意。
モクズガニ
中国料理では有名な上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)と同じお仲間。基本的に川に生息しているが、生まれは海。なぜなら、塩分濃度が高いところでないと成長ができないからだ。気になるのはそう。名前の由来。藻屑なんてどこから…と思っていたら、カニばさみに長い毛がもさもさと生えている様が藻屑に見えることから名づけられたそうだ。上海ガニのお仲間ということもあり、味は最高級に美味。もちろん身も上手いが、特に雌の卵巣が好まれている。なお、サワガニと同じく生食や加熱処理があまいと感染症にかかるリスクがあるので要注意だ。
チュウゴクモズクガニ
日本ではおなじみ「上海ガニ」だ。なぜ「チュウゴクモクズガニ」の和名がついているのかといえば、1976年に日本の動物学者「酒井 恒」が呼び始めたのがきっかけとなっている。生息地はその名の通り中国の長江流域を中心に朝鮮半島まで広く分布している。日本でも食としてはすっかり有名だがアメリカ、ヨーロッパでは侵略的外来種としてその名が知られている。もちろん味は言うまでもなく上手い。
アカテガニ
海岸や川沿い、土手や森林、石垣などに生息し、乾燥に強く陸上での生活に適応したカニである。それゆえ、家に侵入したり、木によじ登ったりすることもできる。通常カニは、えら呼吸をして水を取りこむので水がないと生きていけない。しかしアカテガニは口から吐き出した水を体を伝わせて足の付け根から再び体内に取り組むという循環システムを持っているのだ。よって少ない水分量でも陸上で生活ができるというわけだ。すごすぎる。
ベンケイガニ
弁慶と聞くとめちゃめちゃ強そうだが。名前の由来は甲羅のごつごつとした質感が弁慶の勇ましい顔つきに似ているというところから来ているという。確かにかっこいい。アカテガニと同じく川辺や森林、石垣など陸地に生息しているが、アカテガニのように高所によじ登ったりといった冒険はせず、基本的には水辺の近くにいるという特徴がある。
スナガニ
きれいな水の砂浜に生息しているカニだ。東アジアに分布し、日本でも東北地方で生息が確認されている。甲羅の幅は3cmほど。砂浜に数十cmから1mほどの深い巣穴を作って生活をしている。夜になるとニョキっと巣穴から飛び出てビーチを徘徊。喪類や小動物を食べる。時には生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんを食らうこともあるそうだ。(ウミガメの記事はこちら!)
オサガニ
スナガニの仲間で干潟に穴を斜めに掘って巣穴を作る。長い目が特徴でとても可愛い。生息地は日本では東京湾。海外では台湾や朝鮮半島、中国北部まで東アジアを中心に広く分布している。甲羅の横幅に対して縦幅が短く横長な見た目から機織りの筬(おさ)にちなんでその名がつけられた。
コメツキガニ
こちらもスナガニ仲間で、河口や砂浜に生息している。体調は10mmほどで非常に小さい。昼間になり潮が引くと巣穴から出て活動を始める。体表面の模様が砂浜の砂とよくなじみ保護色の役割を果たしている。遠くから見れば風で運ばれる砂同然だ。スナガニと違い水質の悪い海岸にも生息する。
シオマネキ
さらにスナガニの仲間を紹介しよう。シオマネキの一番の特徴はなんといってもその見た目。オスは片方のはさみが極端に大きいのだ。その大きさは甲羅のサイズ(20mm~40mm)に匹敵する。でかっ!!どちらのはさみが大きくなるのか気になった方もいるだろう。大きさは「利き腕」がどちらかにより右ばさみが大きくなることもあれば、左ばさみが大きくなることもあるのだ。メスに対してはご自慢の巨大ハサミをフリフリして「ウェービング」と呼ばれる求愛行動を行っている。
マメコブシガニ
マメというだけあり、甲羅の幅は21mmほどの干潟に生息する小さなカニ。こぶしのように丸っこく盛り上がりがある甲羅が特徴。干潮時には波打ち際や水たまりを徘徊する。移動スピードは遅い。主にアサリなどの貝の死骸を食べる。
アシハラガニ
東アジアの干潟に生息するカニ。名前はヨシ(※アシの別名)というイネ科の植物が生い茂っている場所「アシ原」に多く生息していたことに由来しているが、実際はアシ原よりも海側に多く生息しているとのこと。潮の引いた砂泥上で夜に活発に活動し、他のカニを捕食したり捨てられた生ごみを食べたりもする超雑食だが主食はちゃんとヨシ(※アシの別名)である。
ミナミコメツキガニ
沖縄から台湾、フィリピン等などの干潟で生息が確認されている甲羅幅10mmほどの青色のカニ。見た目はカニ界のアイドルといっても過言ではないくらいのつぶらな可愛さだが、あまりおいしくはなく食用には向かない。
また食した後は味覚異常をおこす場合があり、いつもの食事に人工甘味料のような甘さを加えてくれる。
イソガニ
日本各地、中国、東南アジア、オーストラリアなど広く分布している甲羅幅25mmほどの平たい見た目のカニ。日本でも岩のある海岸にたくさん生息している。意外と身近にいるので飼ってみたくなる人もいるとは思うが、汚れた海水では死んでしまうため、きれいな水質をしっかりと保つ必要がある。食用としては一般的ではないが味噌汁などで食される場合もある。
イワガニ
その名の通り、岩の多い海岸に多く生息するカニ。波打ち際の岩場や水辺を素早く走り回る。日本では全国各地で見られ、それ以外ではアメリカのオレゴン州以南やハワイ諸島、ガラパゴス諸島にも分布している。敵を察知すると素早く岩の隙間に逃げ込むが、逃げ場がなく大ピンチ状態の場合は海にダイブする。食用としては身が少ないので一般的ではないが、濃厚な蟹の出汁が取れることからイタリア料理などに利用されている。
ショウジンガニ
こちらも岩の多い海岸に多く生息するカニ。最大の甲羅幅は6cmほどで、甲羅の表面上に短めの毛がたくさん生えている。太平洋西部に広く分布しており、日本でも東北地方から南側に生息している。イワガニと同様に岩を上を素早く移動し、岩の隙間にひそんだりしている。雑食性で海藻や小動物などを食べる。汚い水質には弱くきれいな磯を好んでいる。味噌汁などにして食されている。
キンセンガニ
インド太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しているカニ。日本でも房総半島から南西諸島・小笠原諸島までで広く生息している。水のきれいな砂浜の潮間帯(潮の干満により水の中になったり、干上がったりする場所)に生息し、水中の砂底を横方向に素早く泳ぎ回る。ギョッと驚いた時などは脚で砂を掻き、一瞬のうちに砂の中に潜ってしまう。このため海水浴場などでは砂に潜ったキンセンガニに気づかずに踏んでしまい絶叫してしまう危険性がある。また、挟まれても超絶痛いので注意が必要である。
ヘイケガニ
日本近海に生息する小型のカニ。気になるのは「ヘイケ」という名前の由来だが、甲羅を見れば一発でわかる。そう、人の顔、それも怒ったような表情に見えるのだ。
この顔が壇ノ浦の戦い(1185年)で海に散った平氏に見えることから「平氏の亡霊が乗り移った」という伝説が生まれ「ヘイケガニ」という名がつけられた。1900年代には生物学者や天文学者が人間に食べられないようにするために見た目を人間の顔に近づけたのでは?という説を提唱したが、甲殻類学者酒井恒が著書の中で化石の段階から見た目の特徴が変わっていないことや、そもそも「ヘイケガニ」自体が食用には全く向かず食べられていないので人間に対する過度な危険認識はない。などといった観点からその説を否定している。
クリスマスアカガニ
インド洋のクリスマス島とココス諸島にのみ生息している固有種のカニ。大型の個体で甲羅幅は11cmほどに達する。名の由来になっているクリスマス島だけで数千万もの数が生息しており、繁殖時には島内を大移動する。クリスマスアカガニ達の大移動はクリスマス島の名物となっており交通量の多い道路では『crab fences』と呼ばれるアルミ製のカニ用の柵が設置され、そこから『crab grids』と呼ばれる小さな地下道にカニ達を誘導させることによりカニたちの安全な移動をサポートしている。
ウモレオウギガニ
名前から既にやばそうなこのカニ。その予感は正しく。。猛毒のカニだ。日本では南西諸島や小笠原諸島、八丈島、伊豆大島に分布し、「テトロドトキシン」「サキシトキシン」共にふぐ毒成分で知られる猛毒を持つ。毒を持つカニの中では食中毒の発生や死亡率がもっとも高く、奄美群島では死亡例も確認されている。毒の持つカニはハサミの先端が黒いという共通した特徴があるので特に注意が必要だ。
トラフカラッパ(ハズカシガニ)
東京湾から九州地方の浅めの海に生息している饅頭のような丸い体と大きなハサミが特徴的なカニ。甲羅幅は8cm~12cmほどで大型。トラフカラッパの「カラッパ」の由来は「椰子の実」のインドネシア語「kelapa(クラパ)」からきている。また、ハサミで顔を隠して恥じらっているように見えることから「ハズカシガニ」という別名をつけられている。
メガネカラッパ
日本の東京湾から南に生息しているトラフカラッパのお仲間。甲羅幅は6cm~8cmほどでトラフラッパよりは少し小ぶりなサイズ。特徴はその名の通り「メガネ」!!!目の周りの斑紋がメガネのように見えることからその名がつけられた。日中は砂の中潜って生活をしている。
深海に生息するカニ
タカアシガニ
日本近海、岩手県から九州までの太平洋沿岸に生息している世界最大の超巨大なカニ。その大きさは甲羅幅が「40cm」、足を広げると「3m~4m」ほどに達する。体重は最大で「19kg」
150 – 800メートルほどの深海で生活している。動物食寄りの雑食で貝などをハサミで潰して食べることが多い。またカニの中では歴史が古い種類で、「生きた化石」とも呼ばれている。食用としては身が水っぽく、カニミソもあまりおいしくはない為、一般的ではないが、漁獲地では塩ゆでや蒸し焼きにして食されている。
ユノハナガニ
水深420-1380 mほどの深海の底、火山や海嶺の※熱水噴出孔生(※地熱で熱せられた水が噴出する大地の亀裂)に生息している白色のカニ。「ユノハナ」の名前の由来は体の色と姿から温泉に舞う湯の花のように見えたことからきている。日本の有人潜水調査船「しんかい6500」によって捕獲されたこともある。深海の中でも比較的深い場所に生息しているため、未だに詳しい生態などは判明していない。(深海の生物はまだまだ謎だらけ!)