オールのようなヒレと大きな甲羅を持った海の生物「ウミガメ」。大昔から人間とのかかわりも強く、浦島太郎などの童話に登場したり、食用として食べられることもあるようだ。
今回は【日本で産卵を行うウミガメの種類】と【世界各地に生息するウミガメの種類】のほか、今では絶滅してしまったアーケロンなどの化石種についてピックアップしてみよう!
ウミガメの種類
ウミガメとは
ウミガメは、【カメ目ウミガメ上科】というグループに分類される爬虫類の総称。世界に300種類ほどいると言われるカメの中でも、海に生息する7種のカメだ。
最大種であるオサガメの大きさは2mを超えることもあり体重は900Kgに達する。寿命は種類によって差があるようで30年~80年ほど。
人懐っこいとも言われる温厚な性格のため、ダイビングでも人気の生物となっている。一方で、人間の活動による海洋汚染や産卵地の減少、乱獲によって個体数が激減しており、世界各地で近い将来絶滅することが予想されている。
日本で産卵するウミガメ3種類
ウミガメは、太平洋・インド洋・大西洋・地中海など世界各地の海に生息している。その中でも日本の海岸で産卵を行うウミガメは「 アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ 」の3種類。
アカウミガメ
日本近海・太平洋・大西洋・インド洋など世界各地に生息するメジャーなウミガメの一種。貝類やクラゲ、魚類、海藻などなんでも食べるようだ。北太平洋に生息する個体群は日本の海岸でも産卵を行うことで知られている。
英名で「”Loggerhead”=頭でっかち」とよばれるように頭部が大きいのが特徴。赤褐色の甲羅と淡黄色の腹甲で見分けることが出来る。
実年齢が分かる個体では、最も長生きしたもので62歳という記録が残っている。
5‐8月にかけて70~150個の卵が巣に産卵され、50‐80日後には孵化し海へと戻っていく。生まれた赤ちゃんアカウミガメは成長を続けながら「メキシコのカリフォルニア半島沖」まで泳いでいくというから驚きだ。
アオウミガメ
アオウミガメは甲長100㎝を超えることも多い大型のウミガメ。最大種であるオサガメ科のオサガメを除くと、ウミガメ科最大のウミガメということになる。 日本では主に小笠原諸島や南西諸島で4月から8月にかけて産卵する様子が見られる。
熱帯から亜熱帯の浅い海に生息し、海藻や海草を食べて生活する。餌となる海藻類に含まれる色素の影響で、体脂肪が青~緑色になっているのが特徴だ。
海草ばかりを食べているので草食を好むのかと思いきや、飼育下では魚類やイカなどを使ったエサも好んで食べるという。単に獲物を捕食するのが苦手だったため、仕方なく海草を食べるようになったのだろう。
卵や肉は食用とされることもあり、大航海時代には海上で捕えることのできる唯一の肉として重宝された。中でもウミガメのスープは高級料理とされたようだ。日本では小笠原諸島で煮物・汁物として食用されており、南西諸島では刺身にされることもある。
タイマイ
タイマイはインド洋・太平洋・大西洋などに生息し、日本では奄美諸島以南の南西諸島で産卵が行われる。甲羅の色彩は黄色で、黒褐色の斑紋が入っていることで見分けられる。
サンゴ礁が発達した熱帯の海洋に生息することから、サンゴのあいだなどに生息する海綿(カイメン)を主食としている。
日本ではべっ甲細工の原料とされたことでも知られているが、食用や工芸用の乱獲のために生息数が激減しており、現在では基本的に捕獲が禁止されている。
ちなみに、肉にはエサ由来の毒が含まれている可能性が高く、過去にはタイマイを食べた人が中毒死する事故も発生している。
日本近海に生息するウミガメ
オサガメ
オサガメは全長2mを達する世界最大のウミガメ。体重は最大で900Kgを超えることも。背中には甲羅がなく、全体を皮膚で覆っているのが特徴だ。
熱帯から温帯の海を回遊しており、餌となるクラゲを求めて水深1000m以上の深海にまで潜ることもある。潜水能力とともに遊泳能力も高く、ウミガメの中では最速の時速24kmで泳ぐ。ウミガメの中では気性が荒いと言われる。
基本的に日本の近くを回遊するのみであるが、2002年には奄美大島で産卵をした事例も確認されている。
ヒメウミガメ
ヒメウミガメは甲長30-60㎝程の小型のウミガメ。主に甲殻類や軟体動物などを捕食する。インド洋・太平洋・大西洋などに広く生息し、日本近海にも表れることがある。
かつては日本で産卵すると考えられていたが、アカウミガメと混同されていたことが分かり、日本では産卵を行わないことが確認された、
ヒメウミガメは産卵期になると、大群で海岸へと上陸し一斉に産卵する「アリバダ」という現象を行うことで知られている。海岸を埋め尽くすほどの数万匹もの個体が一斉に産卵を行うことで、天敵から生き残る卵を増やし生存率を高める効果があるようだ。
世界のウミガメ
ヒラタウミガメ
ヒラタウミガメはオーストラリアからインドネシア、パプアニューギニアにかけて生息する甲長100㎝ほどの大型のウミガメ。
日本での目撃例はないとされている。他のウミガメが外洋などを回遊するのと違い、大陸棚の浅い海から離れることもないようだ。
ヒラダウミガメは比較的研究がなされておらず、詳細な生態や生息数など不明な点が多いウミガメだ。
クロウミガメ
東太平洋を中心に生息するクロウミガメ。分類に関してアオウミガメの亜種であるとする説と別種であるとする説が存在している。
名前の通りアオウミガメに比べて全体的に黒く、腹部や頭部にある大きなウロコの周辺部がアオウミガメは黄色いのに対して、クロウミガメでは黒くなっている。
日本ではほとんど見られないが、西表島や沖縄北部でわずかに目撃例もある。
ウミガメの化石種
ウミガメは、およそ1億1000万年前の白亜紀には誕生し、恐竜たちが存在していた海を泳ぎまわっていた。
アーケロン
アーケロンは今から約7500万年前の白亜紀後期に生息していたカメの一種。全長は4m以上に達し、現生最大のカメであるオサガメの2倍以上もあった。
モササウルス類などの海洋棲大型爬虫類に捕食されていたとみられており、化石からは四肢の一部が損傷している個体も見つかっている。
主に海藻やカイメン、クラゲなどを捕食していたと考えられており、一部ではアンモナイトを食べた可能性も指摘されている。
デスマトケリス
甲長約110㎝の大型のウミガメ。今から約9000面年前に生息していたとされる。
化石は北米大陸をはじめ、北海道夕張市南部の夕張川などからも出土している。このことから、デスマトケリスは世界各地の広範囲の海に生息していたと考えられている。
サンタナケリス
今から約1億1000万年前の白亜紀中期に生息していた最古級のウミガメ。甲長約14㎝とウミガメの中でもかなり小さい。
ウミガメの特徴に「ウミガメの涙」で知られる涙腺があるが、すでにサンタネケリスの目の近くには大きな涙腺が備わっており、過剰な塩分を排出出来ていたようだ。
プロトステガ・ギガス
約8350万年前の地層から発見された大型のウミガメ。全長は約3mに達しており、アーケロンに次いで史上2番目に大きいカメとして知られている。