【リュウグウノツカイ】人魚のモデル?奇怪な深海魚の特徴と謎の生態!

深海魚の中でも圧倒的な人気を誇る『リュウグウノツカイ』。

異様なまでに細長い身体、魚とは思えないほどの奇妙な顔立ち、未だ解明されることの無い生態…

今回はリュウグウノツカイという奇妙な魚の特徴と生態、リュウグウノツカイにまつわる伝説について紹介しよう。

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リュウグウノツカイ

リュウグウノツカイはアカマンボウ目リュウグウノツカイ科に属する魚類の一種。太平洋・インド洋・大西洋などをはじめとした世界中の海に生息する硬骨魚類だ。

リュウグウノツカイ

全長は3mから最大11mに成長し、太刀魚のような細長い体つきをしているのが特徴的。

見た目の恐ろしさに反して大人しい性格であり、普段は水深200-1000mの深海の中でも海底から離れた中層を漂いながら、群れを作らずにひっそり生活している。

彼らの存在は古くから世界中で知られていたことが分かっており、ヨーロッパでは「ニシンの王 (King of Herrings)」と呼ばれ、漁の成否を占う前兆と位置付けられていた。

リュウグウノツカイの特徴

リュウグウノツカイの身体の特徴について詳しく見ていこう。

長さ・体長

定期網などにかかるリュウグウノツカイの全長は3mほどであることが多いと言われているが、これまでには大きなもので全長11m、体重272kgにも達する巨大な個体も確認されている。

リュウグウノツカイ

11mを超える現生の硬骨魚類は未だ発見されていないため、リュウグウノツカイは硬骨魚類の中で世界最長の種であると考えられている。

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うろこの無い皮膚

リュウグウノツカイの皮膚は全身が銀白色をしており、個体によって薄い縞模様や斑模様が並ぶ。

リュウグウノツカイ

皮膚にはウロコが無く、鳥肌のようなブツブツが並んでおり、触るとプニプニしており柔らかいそうだ。

ちなみに、リュウグウノツカイはウロコだけでなく、鰾(浮き袋)も持っていないことが分かっている。

赤いヒレ

リュウグウノツカイの部位の中でも一際目立っているのが身体の上下にある赤いヒレ。背ビレ・胸ビレ・腹ビレが深い紅色をしている。

背ビレは頭部から尾の先端まで繋がっており、鰭条数(ヒレを支えるスジの数)は260-412本と、とてつもない数だ。

※鰭条数(キジョウスウ)=ヒレを支えるスジの数。魚のヒレには通常、硬い刺条と柔らかい軟条があるが、リュウグウノツカイの場合は全て軟条で出来ている。

数百本の背ビレのうち、前方の6-10本はヒゲのように細長く伸びており、髪の毛のように水中を漂う。

その一方で、腹ビレは左右1本ずつの計2本しか生えておらず、糸のように著しく長く発達し、先端がオール状に膨らんでいるのが特徴だ。

オール状に膨らんだ腹びれの先端部分には多数の化学受容器が存在しており、この特殊な器官により餌を検知するのではないかと考えられている。

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リュウグウノツカイは世界一長い魚類?

リュウグウノツカイは現生する硬骨魚類の中で最長ではあるが、魚類最長ではない。

世界最長の魚類ジンベエザメ

一部ではリュウグウノツカイが「地球一長い魚類」として紹介されることもあるが、魚類の中で最も長く大きな体を持っているのは『ジンベエザメ』だという認識が一般的だ。

ジンベエザメは、リュウグウノツカイと同じ『魚類』ではあるものの、軟骨魚類というグループに属している。

そのため、リュウグウノツカイは『魚類最長の魚』ではなく、『硬骨魚類最長の魚』だという事になるので注意しておきたい。

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リュウグウノツカイの名前の由来

リュウグウノツカイは漢字で書くと『竜宮の遣い』。

竜宮と言えば浦島太郎に登場する『竜宮城』を連想するかと思うが、リュウグウノツカイは竜宮城からの使者という事なのだろうか?

ウミガメ

気になるリュウグウノツカイの名前の由来だが、現在のところ由来や語源に関する信憑性のある文献は見つかっておらず、詳細不明というのが実情なようだ。

もしかすると、リュウグウノツカイの美しい銀色の肌と紅色のヒレを見た昔の人々が、彼らから神秘的なものを感じ取ったのかもしれない。

中国と台湾では、リュウグウノツカイの事を「鶏冠刀魚」や「皇帯魚」と呼ぶらしく、日本と同じように高貴で神秘的なイメージを持たれていたことが分かる。

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リュウグウノツカイの生態

リュウグウノツカイは深海に生息しており、その生態については詳しい事は分かっていない。

漁業のために設置された定置網にかかったり、海岸に打ち上げられることもあるが、生きた状態の個体が発見されることも少なく、思うように研究が進んでいないのが現状だ。

リュウグウノツカイの食性・食べ物

リュウグウノツカイが深海で何を食べて生活しているのかについては解明されていない部分も多くあるが、おそらく小さな獲物を捕食していると考えられている。

リュウグウノツカイを解剖し、消化管内の内容物を採取してみるとオキアミなどの甲殻類が確認できることが多い。

リュウグウノツカイには歯が無いため、大きな獲物に噛み付くということは考えにくい。

これらの事から、オキアミをはじめとした小さなプランクトンなどを飲み込むように捕食していると推測されている。

リュウグウノツカイの泳ぎ方【動画】

かつては、見た目の印象から「ウミヘビやウナギのように体をくねらせるように泳いでいる」と考えられていたこともあったリュウグウノツカイ。

研究が進むにつれて、リュウグウノツカイには身体をくねらせて泳ぐような筋肉の構造をしていないことがわかったという。

近年になってリュウグウノツカイが泳いでいる姿が撮影されるようになり、「体をくねらせて泳ぐ」という説は間違いであったことが証明された。

リュウグウノツカイの泳ぎ方は、体を棒のように一直線に保ったまま、顔を起こして立ち泳ぎするのだ。動画を見ると背ビレをひらひらと揺らしているのが分かる。

見たところ遊泳力はあまり優れていないようだ。

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空腹になると体を切り落とす?

リュウグウノツカイは体をくねらせることなく泳いでいることがわかった。ではなぜ、あれほど長い体を持っているのだろうか?

天敵の少ない環境で生活しているため自然と長くなっていったという意見や、体が長い事で背びれを長くすることができるため泳ぎやすくなるなんて説もあるが、まだはっきりとしたことは分かっていないのが現状だ。

ちなみに、リュウグウノツカイの臓器は全て身体の前方に集まっている。つまり、長い体の後方部分は無くても生きていくことはできるらしい。

実際、極度の空腹状態に陥ったリュウグウノツカイはエネルギーの消費を抑えるために自らの身体の一部を切り離すことが分かっている。さらに、天敵に捕まった際にも身体を切り離すことで脱出することがあるそうだ。

この動画では尾が切れた状態のリュウグウノツカイが確認できる。

この行動は「自切」と呼ばれるもので、尻尾を切って逃げることができるトカゲと同じ行動だ。

エネルギー不足で切り離すくらいなら長くならない方が良いような気もするが、身体が長いことによるメリットも何かしらあるのだろう。

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リュウグウノツカイにまつわる伝説

奇妙な身体のリュウグウノツカイは、古くから多くの伝説を産んできた。

リュウグウノツカイが世界各地に生息していることもあり、多くの国々でリュウグウノツカイにまつわる伝承が残っている。ここでは、その一部を紹介しよう。

海の怪物シーサーペントの正体はリュウグウノツカイ?

世界各地に目撃例が残っている未確認生物(UMA)である『シーサーペント』。大海蛇とも呼ばれる海の怪物だ。

シーサーペント
シーサーペントの想像図

外洋への進出が活発になった中世以降、船乗りたちによって目撃されたことで有名となったと言われている。

言い伝えられるシーサーペントの特徴は様々だが「ヘビのように細長く、船ほどもある巨大な体を持ち、たてがみのような毛が生えていた。」といったものがある。

リュウグウノツカイ
1860年に描かれたリュウグウノツカイのスケッチ

シーサーペントの正体は現在でもわかっていないが、外洋性の生物でこれほど長い体を持ち、たてがみのようなヒレを持ち、海面近くで目撃される可能性がある生物として「リュウグウノツカイ」が挙げられることが多い。

もしかすると、中世の船乗りたちは海面近くにやってきたリュウグウノツカイの長い体を見て、「恐ろしい大海蛇」を想像したのかもしれない。

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リュウグウノツカイが人魚伝説のモデル?

リュウグウノツカイの伝説が残っているのは海外だけではない。なんと、日本における人魚伝説では「リュウグウノツカイが人魚の正体なのではないか?」という説が有力なのだ。

人魚伝説は世界各地に残っており、同じ人魚と言っても地域によって言い伝えが大きく異なる。

日本における人魚伝説とは『古今著聞集』や『甲子夜話』、『六物新誌』などの日本の歴史的な書物に記載された人魚のことだ。

これらの文献で伝えられる人魚の共通する特徴として「白い肌を持ち、赤い髪を備えている」というものがある。

つまり、当時の人々はリュウグウノツカイを人魚(人面魚)と考えたのではないだろうか?

『長崎見聞録』に描かれた人魚図では、長い体や髪(ヒレ)などリュウグウノツカイの特徴から人魚を想像したようにも考えられる。

また、日本海沿岸に人魚伝説が多いことも、リュウグウノツカイの目撃例が太平洋側よりも日本海側で多いことと整合している。

これらの事から、日本における人魚のモデルはリュウグウノツカイだと考える学者も多いそうだ。

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リュウグウノツカイを飼育している水族館はある?

リュウグウノツカイが生きた状態で発見されることは少ない。砂浜に打ち上げられたものは既に弱っていたり、網にかかった個体も陸に運ばれるまでに瀕死の状態になってしまうからだ。

リュウグウノツカイ

そのため、リュウグウノツカイの飼育に成功した例はない。水族館で元気に泳いでいるリュウグウノツカイの姿を見ることは不可能と言っていいだろう。

しかし、過去には世界初となる生きた個体の展示が日本の水族館で行われたことがあった。

2010年、奇跡的に生きたリュウグウノツカイが捕獲され、長崎県にある九十九島水族館「海きらら」に運び込まれた。

残念なことに捕獲されたときから衰弱していたリュウグウノツカイは展示から約34分で息絶えてしまったが、偶然この水族館に居合わせた人々は泳ぐリュウグウノツカイを見ることができたようだ。

もしかすると、今後の飼育技術の進展によっては水族館でのリュウグウノツカイ展示もありうるかもしれないが、まだまだ先の話になりそうだ。

今後の研究に期待!

今回は人気の深海魚リュウグウノツカイについてピックアップした。

リュウグウノツカイは、深海魚の中でも海岸に打ち上げられたりと人の眼に触れることが多く、比較的有名な部類に入ると思うが、その生態は未だ謎に包まれている。

今後の研究によってはリュウグウノツカイに関する新発見があるかもしれない。

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