
マンボウといえば、そのユニークな見た目と、海面でゆらゆらと浮かぶ姿で多くの人々に親しまれている。
ちなみに英語ではMola molaというのだ。名前からしてなんたるかわいさ。
しかし、その可愛らしいイメージの裏には、驚くべき巨体と謎に満ちた生態が隠されているのだ。
成熟したマンボウは体長が3メートルを超えることもあり、目の前に現れると、その圧倒的な存在感にびっくりする人もいるのではないだろうか。
数年前に水族館で見たとき、その巨大さに「ひぇぇぇぇ!」っとおったまげた記憶がある。
それと、よく見ると顔つきが虚無に満ちていてどことなく怖いのだ笑
もちろん、狂暴さを感じるような顔つきでは断じてないが。決して敵に回してはいけないと生物としての防衛本能が訴えてくる。
今回は、そんな魅力と不思議で溢れたマンボウの知られざる一面にずずずいっと迫っていく!
マンボウの生息地は?夏には日本沿岸にも現れる??
マンボウは、北海道以南の日本を含む、世界中の温帯および熱帯海域に広く分布している。
外洋の表層から中層にかけて生息し、沖合いの水深30〜70メートルのところでよく見られる。
特に夏から秋にかけて日本の沿岸に現れることで知られているのだ。
こうした時期には、ダイバーや釣り人たちが偶然遭遇することも多く、その巨大な姿に驚かされることも少なくない。
さらに、マンボウは深海にも潜ることができ、近年の研究によって水深800メートルまで潜ることが確認されているのだ。
さまざまな水深を自在に行き来するため、その行動範囲の広さにも驚かされる。
驚くべきマンボウの骨格構造!浮遊しているような泳ぎ方の謎
マンボウの体はフグ目に属し、腹びれや肋骨がない特殊な構造を持っているのだ。
その結果、マンボウは尾びれではなく、背びれと尻びれをシンクロさせて羽ばたくように泳ぐのが特徴。
尾びれのように見える部分は「舵びれ」と呼ばれ、実際には背びれと臀びれが延長した構造であり、
この舵びれは、通常の魚に見られる尾びれを支える骨格とは異なり、背びれと臀びれを支える骨格に似た構造を持っている。
この泳ぎ方により、海の中を「浮遊」しているように見え、独特の見た目をさらに引き立てている。
また、骨格自体も非常に軽く、これがマンボウの浮力を保つ助けとなっているのだ。
このユニークな骨格構造により、マンボウは他の魚類とは一線を画す優雅な動きを見せてくれるのだ。
意外と短命?高い死亡率のまさかの理由

マンボウは数百万もの卵を産むとされているが、成長して大人になるのはごく少数。
特に幼魚時代には小さな体が多くの捕食者に狙われるため、生存率が極めて低いのだ。
幼魚は、まるで金平糖のように体に突起があり、その小さな姿は多くの捕食者にとって格好の標的に。
こうした厳しい環境の中で、わずかな個体しか成長できないというのが、マンボウの短命さの一因となっている。
捕食されやすいが進化した戦略
マンボウはその大きな体で、クラゲなどの比較的捕まえやすい獲物を食べることで生き延びている。
これは、深海から海面に戻るユニークな生活リズムによるもので、冷えた体を海面近くで温めるという特性に関連しているとされている。
このような「サーモリギュレーション」行動によって、深海で餌を探した後には、効率よく体温を回復させることが可能なのだ。
2024年5月、海響館で撮影された動画では、マンボウがクラゲを一飲みにする瞬間が捉えられた。この映像はSNSで大きな反響を呼んだ。映像は非常に貴重で、論文にまとめるべきだ」という意見も寄せられるほど。
また、マンボウは自分の体を寄生虫から守るために、他の魚に体を掃除してもらう「クリーニング行動」をとることもある。
このように、捕食されやすい環境に対応するための多様な生存戦略を進化させているのである。
怖いほど巨体…顔も圧倒的強者感…けれど超脆い

成熟したマンボウは、体長3メートル、体重が2トンを超えることもある。
特にウシマンボウ(Mola alexandrini)では、最大で2.7トンを記録している。
海で突然この巨体に遭遇したら、おったまげること間違いなし!
それでも、この巨体は意外とデリケートで、皮膚が厚くても寄生虫に悩まされがちなのだ。
また、傷つきやすいことで知られ、ちょっとした刺激でも命に関わることもある。
例えば、人間が直接触れるだけでもやけどを起こす可能性があるほどにデリケートなのだ。
特に、水族館などで飼育されているマンボウは、水槽の壁にぶつかっただけで体に傷がつくことがあり、これが感染症の原因になることもある。
マンボウは急な方向転換が苦手で、特に水槽の壁にぶつかることが多い。
このため、飼育水槽ではビニール製の衝突防止フェンスが設置され、衝撃を和らげる工夫がされている。
マンボウミステリー!謎多き繁殖行動

繁殖期のマンボウは群れをなして特定の海域に集まるが、その際の産卵行動はまだ解明されていない部分が多く、マンボウは一度に約3億個の卵を産むとされる説もあるが、これは科学的な裏付けが乏しい。
実際には、捕獲されたマンボウの体内に未成熟な卵が数億個存在していたという報告があり、これが誤解を生んでいる。
専門家によると、マンボウは一度に全ての卵を産むわけではなく、産卵の様子を観察した記録も存在していない。
唯一の観察例として、1997年に千葉県の鴨川シーワールドで、体長1mのマンボウが透明なゼリー状の卵塊を19回放出した事例がある。
この事例は非常に珍しく、マンボウの繁殖に関する貴重な情報を提供しているが、自然界での産卵は未だに確認されていない。
現代においてもマンボウはまだまだ謎の多い、生き物なのだ。
生マンボウが観察できる日本の水族館
日本でマンボウを常設展示している水族館をご紹介。これらの水族館では、マンボウをその目で観察することができる。
- アクアワールド茨城県大洗水族館
日本最大の専用水槽を持ち、マンボウの観察ポイントが豊富。 - 鴨川シーワールド
千葉県に位置し、マンボウの飼育に力を入れている。 - 八景島シーパラダイス
神奈川県横浜市にあり、マンボウを間近で見ることができる。 - 越前松島水族館
中部地方で唯一、マンボウを常設展示している水族館。 - 志摩マリンランド
三重県にあり、マンボウの展示が行われている。 - 海遊館
大阪にある大規模な水族館で、マンボウの展示も行っている。 - いおワールドかごしま水族館
鹿児島県に位置し、マンボウの展示が行われている。
マンボウはそのユニークな姿と泳ぎ方から、多くの来館者に人気がある。
各水族館では、マンボウの生態や飼育方法についての情報提供も行っており、特に子供たちにとっては教育的な体験となること間違いなし。
また、マンボウの飼育は難易度が高く、各施設での飼育記録や展示内容は随時更新されるため、訪れる前に各施設の最新情報を要チェック。
まとめ
マンボウは、そのユニークでユーモラスな見た目から愛される一方で、その巨体と特異な生態にはたくさんの驚きが隠れている。
体長3メートルを超える巨大な姿は、まさに自然界の驚異そのもの、同時にその繊細さや捕食者に対する脆弱さも抱えているのだ。
深海から海面にかけての生活や、高い死亡率を乗り越えて生き延びるための進化した戦略など、マンボウは実に多くの謎と不思議に満ちている。
このようなギャップこそがマンボウの最大の魅力であり、私たち人間にとって、海の奥深さや生命の神秘を感じさせてくれる存在なのである。
マンボウに対する理解を深めることで、私たちは海洋生物の多様性とその美しさをより一層知ることができるだろう。