カルボナーラにナポリタン。アラビアータに和風パスタ・・・。
とても種類の多い人気の食べ物『パスタ』だが、中でもひときわ異彩を放っているのが『イカスミパスタ』だろう。真っ黒なイカの墨を素材に作られた伝統料理。見た目はともかく味は普通に美味しい。
ただ、イカスミパスタを食べるときに毎回考えてしまう事がある。「なんでイカ墨料理はあるのにタコ墨料理は無いの・・・・?」
ということで、今日は「なぜイカスミ料理はあるのにタコスミ料理は無いのか?」という疑問を『タコとイカの違い』という観点から調べてみた。
イカ墨とタコ墨の違い
生物としての使い方の違い!

タコとイカは腕が何本もあり、頭のような部分に臓器があります。ヌルヌルしていて、見た目が似ているようにも感じますが、生物としては全く違う種類です。また、自らの身を守るために墨を吐くという共通点もありますが、あの墨も実は全く違うものだったのでご紹介します。
タコ墨は視界を奪う目潰し煙幕
タコは自分を捕食する敵に出会うと、タコ墨を吐き、瞬時に逃げることができます。タコ墨は吐き出すと同時に周囲一面にブワッと広がり、相手の視界を奪います。墨で目潰しをして、何も見えなくなった敵から逃げ去る戦法です。
この動画を見ても、まるで忍者が使う煙幕のような効果があるのがわかります。
イカ墨は威嚇と撹乱!分身の術
一方、イカの場合は『ブワッ』と広がるというよりも、『シュッ』と飛び出すような墨を吐きます。この墨を見た敵はイカが2つに分裂したように見えてしまい、どちらが本物かわからなくなるそうです。イカもタコ同様、敵が混乱した隙にその場を後にします。
こちらの動画と先ほどのタコの動画を見比べると、イカが吐いた墨の方がダントツで早く飛び出し、いつまでも水中で形作っているのがわかりますね。
料理での使いやすさ!味の違い

イカとタコの墨の使い方が違うことはわかりましたが、それだけではタコ墨料理が無い理由とは関係ありません。それでは『味の違い』はどうなのでしょうか?
もしかすると、イカ墨は美味しいけどタコ墨は美味しく無いのかもしれないですね。料理としての墨の味の違いを成分から見ていきましょう。
イカ墨はトロトロ
イカの墨は粘度が高く、パスタなどの料理にも絡みやすいと言われています。イカスミの中には、食材のうまみ成分である『アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸』を多く含んでいるため、成分からみても美味しいという事は間違いないようです。
昔からイカの墨には制菌効果があるとされてきましたが、近年の研究ではイカスミには「ムコ多糖類の一種であるコンドロイチン硫酸」が含まれており、免疫力の強化にも効果があるのではないかと考えられています。イカスミはおいしいだけでなく、体にも良いという事らしいです。
タコ墨はペシャペシャ
一方、タコスミはイカスミより粘度が少なくパシャパシャしています。つまり、料理にも絡ませにくいという事です。では、タコスミはおいしくないのか?というと、そういう訳でもないようです。
イカスミには、うまみ成分である『アミノ酸』が多く含まれていると書きました。スルメイカの場合、イカスミ100gあたりに含まれるアスパラギン酸とグルタミン酸は・・・
アスパラギン酸:8.7mg
グルタミン酸:24.4mg
です。では、タコスミの場合はどうでしょう・・・?タコにもいろいろな種類がいますが、日本でも有名なイイダコの場合、タコスミ100gあたりに含まれる成分は・・・
アスパラギン酸:42.2mg
グルタミン酸:74.4mg
となります。
驚くべきことに、タコスミのうまみ成分の方が桁違いに多いのです。それでは、タコスミ料理がない理由は、単に料理に使い辛いという事だけなのでしょうか?
取り出しやすさと量の違い

イカ墨もタコ墨も美味しいということがわかりましたが、何故タコスミ料理は無いのでしょうか?その答えは、イカとタコの生物としての違いにありました。
1匹あたりの墨の量の違い
そもそも、イカとタコには似ている点が多いものの、生物としては全く違うものです。当然身体の器官も変わってきます。イカの場合は墨を蓄える墨袋がタコよりも大きく、一匹あたり13g程のイカ墨を蓄えています。イカ墨は、シュッと勢いよく吐き出すため、相当量の墨が必要だったのかもしれません。
一方、タコの墨はブワッと吐き出すだけなので、そこまでの量を必要としません。一匹あたりが持つ墨の量は、イカよりも少ない8g程。さらに、水揚げの際にほとんどの墨を吐いてしまうそうです。※ネット調べ。最終的に採れるタコスミはイカの10分の1というデータもありました。
つまり、イカ墨の代わりにタコ墨を使う場合、少なくとも2匹分のタコを捕まえる必要があります。タコ墨の入手の難しさがタコスミ料理がない理由とも言えそうです。
そもそもタコスミは取り出しづらい
タコスミが料理に使われない理由は他にも存在します。それは「タコスミはとても取り出すのがとても難しい!」という事です。
イカ墨が入っている墨袋は表面からほど近い場所にあり、袋を破かないようにサッと切り込みを入れるだけで取り出せます。素人でも慣れれば簡単にできます。
しかし、タコ墨が入っている墨袋は、内臓(ワタ)の内部に埋まっているため、プロの料理人であっても位置を把握することが難しく、簡単には取り出せないそうです。
コスパの違い!タコスミは高級品

しかし、飲食店が乱立する今の時代、珍しい料理を提供するお店も多いです。日本では珍しい多国籍料理や、今まではメジャーではなかった食べ物が流行することもあります。
ならば、タコ墨料理を提供するお店があってもおかしくないような気もしますが、あまり聞いたことがありません。何故タコ墨料理は無いのか?その最大の答えはイカとタコの漁獲高の差にありました。
タコとイカ!漁獲量の圧倒的な差
タコもイカもスーパーに行けばすぐに買える日常的な食材ですが、意外にも漁獲量には大きな差がありました。
イカは日本だけでも約20万tの漁獲高がありますが、なんとタコは約3万5千tしか獲れないそうなのです。※ネット調べ。発表している団体によってデータがまちまちでした。
イカは群れを為して泳いでいるため、網で狙ってガバッと捕まえるのですが、タコは個々で生活しているので、一気に捕まえることが難しいようです。たしかに、お店でもイカよりタコの方が高い印象ですよね。
タコ墨パスタは7000円超え!?
それでもタコ墨料理を提供したいと思ったらいくらくらいかかるのでしょうか?
調べてみたところ、2人前のタコ墨パスタを作るのに80匹分のタコが必要とのこと。さらに、タコスミは取り出すのに時間がかかるという事で、1匹10分かかると考えて、80匹分の墨袋を取り出すのに13時間もかかってしまうようです。このような理由から、タコ墨パスタを作るには1人前7000円を超えることが予想されるのだとか。
この計算が正しかったとしても、この金額はあくまで『原価』なので、一人前1万円を超えることも想像できますね。恐ろしい・・・・。
それでも食べてみたい!タコ墨パスタ
結論として、タコスミ料理がない理由は・・・・料理としてのコスパが悪すぎる!という事になります。
それでも、どうにかタコスミ料理を食べてみたい!と思いネットを探してみましたが、なかなか見つかりませんでした・・・。
ここなら食べれるよ!という情報をお持ちの方は教えてください!