【カワイルカ】川に住むイルカが怖い!種類と不思議な生態

海に生息する哺乳類の中で、最も人気が高いと言っても過言ではない『イルカ』。一口に『イルカ』といっても数多くの種類が確認されており、その姿や生態は様々です。

今回は、そんなイルカ達の中でも『川に生息する』という特殊な生態を持つ『カワイルカ』をピックアップしましょう!

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カワイルカ

Geisler et al CC表示-継承

カワイルカとは、クジラ目※ハクジラ亜科に分類されるイルカ達で、大きく分けて4種類が確認されています。※近年ではクジラ目を廃止し、鯨偶蹄目とすることもあるようです。

イルカといえば海の生き物であるイメージが定着していますが、このカワイルカ達は淡水である川に生息することで知られているのです。

ちなみに、イルカのイラストなどではピンク色のイルカが描かれていることがありますが、カワイルカの中には実際にピンクのイルカも存在しているんですよ。

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カワイルカの種類

クジラ目カワイルカ亜科は、大きく4つグループ(科)に分けられます。ここでは生息範囲の異なる4種類のカワイルカについてご紹介します。

カワイルカ科

カワイルカ亜科カワイルカ科に属するカワイルカには、インドカワイルカ・ガンジスカワイルカ・インダスカワイルカなどが含まれます。名前から見てもわかるように、インドのガンジス川やパキスタンのインダス川などの南アジアに生息するカワイルカです。

一説によると、海に生息するマイルカなどよりも早くに初期のクジラ目から分岐したと言われており、独自の進化を遂げたイルカであるとされています。

生息地によっては個体数が20頭程度まで減少しているグループもあるほど絶滅の危険性が高いと言われています。

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アマゾンカワイルカ科

南米大陸のアマゾン川水域に生息するのはアマゾンカワイルカです。カワイルカの中でも最も大きな種類で、体長2-3mにまで成長し体重は150キロを超えます。

カワイルカの中では視力が良いと言われており、膨らんだ頰に遮られる下方向以外を広く見渡す事ができます。

川底の獲物を捕らえることもあるにも関わらず下方向が見えないのは謎ですが、前方の歯が鋭く尖っており魚類を捕まえるのに適している事から魚類の捕食に適しているのかもしれません。

ヨウスコウカワイルカ科

中国の長江に生息するヨウスコウカワイルカ。2006年には絶滅種として指定されました。

1950年代には6000頭ほど生息していたと言われているヨウスコウカワイルカですが、世界人口の12%が生活している長江水域周辺は環境汚染が著しく、たった50年の間に10頭程度まで個体数が減少しました。

その後の2006年に行われた調査では下流から上流までくまなく調査が行われましたが、カワイルカは1頭も発見されなかったため絶滅したと発表されました。

その後、2007年に入ってヨウスコウカワイルカと思われる写真が撮影されたことから再調査が行われていますが、仮に少数の個体が残っていたとしても絶滅するのは時間の問題と言われています。

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ラプラタカワイルカ科

アマゾンカワイルカと同じ南米大陸のラプラタ川周辺に生息するラプラタカワイルカ。

他のカワイルカが完全な淡水で生活するのと異なり、ラプラタカワイルカは海洋〜河口に生息する川に住んでいないカワイルカです。海洋にも生息してはいるものの、ほとんど海へは行かずに河口を中心に生活します。

体長の15%にも達する長い口吻を持っており、これはクジラ目の生物の中では体長比で最も長いと言われています。

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カワイルカの特徴

カワイルカは淡水である川で生活するため、海のイルカとは異なる身体を持っています。ここでは、そんなカワイルカ特有の身体の特徴についてみていきましょう。

背びれがなく胸ビレが大きい

イルカといえば三角形の背ビレが特徴的ですが、カワイルカの多くは背ビレがほとんどありません。また、海のイルカに比べて胸ビレが大きいこともわかっています。

このカワイルカ特有の身体は、海よりも狭くて障害物の多い川の中を器用に泳ぐために効率が良いと考えられます。

口吻が細長い

イルカの口吻は頭部から突き出た形をしていますが、カワイルカの場合は極端に長くなった口吻を持っているのが特徴的です。

海のイルカに比べて口吻が細長くなっており、口を閉じても鋭い歯が確認できます。肉食性の魚類であるガーのような姿は「カワイルカは見た目が怖い!」と言われる要因の一つです。

目が小さい

カワイルカは、海のイルカに比べて目が小さい種類が多いとされています。濁った水の中で視力に頼れないために目が小さく退化したものと考えられていますが、このことが原因となり、人間の仕掛けた網にかかってしまうなどの問題が発生しています。

首を曲げることができる

外見からはわからないカワイルカの特徴としては、首を曲げることができるという事も挙げられます。

海のイルカ達は首の骨が胴体にくっついており、私たちのように左右上下に首を動かすことができません。しかし、カワイルカは入り組んだ川での生活に適応するため、首の骨が固定されておらず細かく首を動かすことができます。

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ピンクのイルカも!

冒頭でも少し触れましたが、カワイルカにはピンク色をしたものも存在します。

アマゾン川に生息するアマゾンカワイルカには体色が明るいピンク色をしている個体も存在しており、別名ピンクイルカとも呼ばれています。一説によると、アマゾンカワイルカのピンク色の肌は雄同士の喧嘩で負った過去の傷跡とも言われています。ピンク色の可愛いイルカほど気性が荒い凶暴イルカだったのです。

ちなみにピンク色のイルカはカワイルカ以外にも、東シナ海〜オーストラリアに生息するシナウスイロイルカなどが有名です。

カワイルカの生態

カワイルカは川での生活に適応するため、海のイルカには見られない生態を持つことで知られています。ここではカワイルカの生態について見ていきましょう。

海のイルカとの競争に負けた?

多くのイルカは海で生活していますがカワイルカ達は一生を淡水の川で終えます。しかし、実はカワイルカ達の祖先も元々は海で生活する普通のイルカだったのです。

1500万年ほど前、まだ原始的なクジラだったアマゾンカワイルカの祖先達は海からアマゾン川の汽水域へと進出しました。海のクジラ達との生存競争に負けたとも考えられていますが、この前後の時代には南アジアや中国周辺でもカワイルカの祖先達が川へと生息範囲を広げています。

カワイルカの進化の流れには諸説ありますが、地理的にも遠い場所で多くのクジラ達が川へと進出したという事実は間違いないようです。

細長い口は川の捕食に最適

カワイルカの特徴でも紹介した細長い口吻。カワイルカ達の口が、こんなに奇妙な形へと進化したのにももちろん理由があります。

海のイルカは海中を泳ぐ小魚やイカなどの魚介類を捕食しますが、川で生活するイルカ達は川底の泥の中に隠れたエビや小魚を捕食します。

捕食対象である小動物は川底の石などの障害物に器用に隠れているため、カワイルカは細長い口吻を使って狭い隙間に口をねじ込む必要があるのです。

視力が弱くてほぼ盲目

ガンジスカワイルカやインダスカワイルカなどのカワイルカの一部の種は、視覚が退化しており、ほとんど盲目であることが分かっています。

彼らの眼球には水晶体が無いことから、光の強さを感知する程度の能力しか有していないと考えられています。

その代わりに、海のクジラなども持っている反響定位と呼ばれる潜水艦のソナーのような能力を持っており、音の反射によって獲物や障害物の位置を把握することができるのです。

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絶滅の危機に瀕している

こんな不思議な生態を持つカワイルカ達ですが、残念なことにクジラ目の中で最も絶滅の危機に瀕していると言われています。

先ほど紹介した、カワイルカ特有の視力の弱さから人間が漁業の為に設置した網に謝って引っかかってしまうケースや、ダムの建設による生息地の分断、工場から排出される環境汚染物質などによって個体数は年々激減しています。

ヨウスコウカワイルカなど、種類によっては今すぐに手厚い保護に乗り出さなければ数年後には絶滅してしまう可能性も高いそうです。


今回は川に生息するイルカ『カワイルカ』についてご紹介しました。

海とは異なる過酷な環境へ進出したカワイルカは生物マニアとしてはロマンが溢れますね!

しかし、私たち人間の活動によって多くのカワイルカ達が絶滅の危機に瀕しています。ヨウスコウカワイルカに関してはたったの50年でほぼ絶滅してしまいました。

今すぐに保護に乗り出さなければ間に合わない事は明白なのですが、思うように保護がなされていないのが現状です。

『次々と動物達が絶滅した後には、私たち人類にも順番が回ってくる』

カワイルカ達は、そんな警鐘を鳴らしているのかもしれません。

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