日本ではあまり聞きなれない人も多いであろう「オカピ」という動物。
オカピは世界三大珍獣の一つとされており、世界的に発見が認められたのは20世紀初頭と、人類との付き合いが比較的短い動物なのだ。
そこで今回は、「オカピという生物の奇妙な生態・発見までの歴史・オカピを見ることが出来る日本の動物園」などをピックアップしてみよう!
世界三大珍獣オカピ
オカピとは?
偶蹄目キリン科オカピ属に分類される生物。キリン科に属していることからも分かるように、オカピはキリンの仲間であるが、体格は馬のような体つきをしており、後ろ足にはシマウマと同じようなストライプ模様が入っている。

馬と似通った部分が多くある一方で、耳は馬というよりもロバのような大きな形をしており、頭部には角を持っている。舌はキリンと同じように青く、耳に届くほど長い。
これほど珍しい特徴を持っている動物であるものの、20世紀始めに発見されるまでは未確認生物の一種であった。
オカピの生息地
オカピが生息するのは、コンゴ民主共和国の森林地帯。かつて、キリンの祖先たちが生活の場を森林から草原に移していった際、そのまま森林で生活することを選んだグループの子孫がオカピであると考えられている。

キリンは見晴らしの良い草原地帯で生活するため、天敵に襲われにくいよう群れで行動するが、オカピは森林で生活するため単独行動が基本だ。奇妙な体の色合いも森林内でのカモフラージュの役割があると考えられている。
かつては、コンゴ民主共和国のほかに、ウガンダにもオカピの個体群が生息していたが、現在では絶滅してしまったと考えられている。
オカピの特徴と生態
①キリンのような頭部
キリンとも馬とも似て非なるオカピだが、いくつかの共通点もある。まずは頭部から見てみよう。

オカピのオスの頭部にはキリンと同じような皮膚でおおわれた7㎝ほどの角が生えている。ちなみにキリンの角は2本だと思っている人が多いが、実際には後頭部の皮膚下にも3本あるので合計5本だ。
また、キリンとオカピの頭には「ワンダーネット」と呼ばれる網目状の毛細血管が張り巡らされている。

キリンほど首の長い生物が頭部を上下させると、脳内に急激な血圧の変化が起こり間違いなくめまいが生じる。これを防ぐのがワンダーネットであるが、なぜ「長い首を持つことなく進化してきたオカピ」が、キリンと同じ器官をもっているのかは分かっていない。
②シマウマのような脚
オカピの中でも一際目を引くのがシマウマのような脚。この美しい模様から「森の貴婦人」と呼ばれるそうだ。

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この脚の模様のせいで、オカピの毛皮が初めてロンドンに届られた際には、シマウマの一種を発見したとして発表されてしまったという逸話も残っている。

確かにシマウマの毛皮にしか見えない。
また、馬は分類上「奇蹄目」に属しておりヒヅメが一つしかないが、「偶蹄目」に属するオカピやキリンはヒヅメが2つに別れている。形こそ似ていても、生物の分類としては全く異なるのだ。
③オカピの食性
オカピの主食はキリンと同じく木の葉や草。長い舌を枝に絡めて千切って食べる。キリンはある程度高いところに生えた木の葉を食べるが、オカピの場合は馬のように地面に生えた草やシダ類も食べることが出来るようだ。

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キリンと同じく舌はとても長く青白い。耳だって掻けてしまうほどだ。

キリンは時おり小鳥などの小動物を捕らえて食べることが報告されているが、オカピが同じように小動物を食べているかについてなど詳しい生態については分かっていない。オカピは警戒心がとても強く、野生での生活を観察することすらままならないためだ。
④オカピの繁殖
詳しい生態が分かっていないオカピであるが、繁殖については分かっている点がいくつかある。というのも、日本の動物園「よこはま動物園ズーラシア」にて繁殖に成功した事例があるのだ。

ズーラシアで繁殖に成功したオカピたちの妊娠期間は、420~450日と1年以上であった。ウシの妊娠期間が280日前後、ヤギが150日程度であることを考えるとかなり長いようだ。
生まれたばかりの子供は、体重14~30kg程度。30分ほどで立ち上がり、3年かけて大人と同じ体格に成長する。

多くの動物は一日に数回の授乳が必要であるが、オカピの母乳は栄養価がとても高いため、一日1回の授乳でも問題ないという。約2年に1頭しか子供を産めないため、子供を大事に育てる必要があるためだろう。
⑤オカピの天敵
オカピの天敵はヒョウなどの肉食動物だ。群れをなさず、これといった反撃手段も持たないオカピは、天敵に見つかってしまったら逃げることしかできない。野生動物の中でも突出した警戒心の高さはそのためだろう。

また、人間もオカピの生存を脅かす天敵のひとつだ。生息地では毛皮などを狙った密猟や、生息地の減少が続いており、現在では10000頭ほどしか残っていないと推定されている。

野生化においての寿命は全く分かっておらず、飼育下においては15年程度といわれている。ただし、30年以上生きた個体もいるという報告もあり、まだまだ詳しいことは分かっていないようだ。
絶滅の危機に瀕しているオカピ
発見された当初はキリンなのかシマウマなのかすら分かっていなかったオカピたち。今でもオカピたちの警戒心の強さや生息域の少なさから研究は思うように進まないが、昔に比べて多くのことが分かってきている。

生態が謎に包まれていることから「世界四大珍獣」の一つとして注目を浴びたオカピたち。このまま研究が進めば「珍獣感」は無くなっていくだろうが、生態の研究が進むことで彼らの絶滅を食い止める手立てが見つかるかもしれない。
21世紀に入り、オカピをはじめ、ジャイアントパンダ・コビトカバ・ボンゴのような「珍獣」と呼ばれた動物たちの生態が解明されはじめ、動物園などでの飼育も可能となってきた。
しかし、彼らの居場所は私たち人間によって奪われつつある。彼らが再び「珍獣」と呼ばれる日が来ないことを願うばかりだ。