名前を知らない人でも写真や映像などで一度は目にしたことがあるであろうアンテロープキャニオン。アメリカ南西部で最も写真撮影されると言われる人気観光地だ。
今回はアンテロープキャニオンの絶景を捉えた写真や動画とともに、アンテロープキャニオンの場所、構造、キャニオンを作り出した鉄砲水の危険性などについてご紹介しよう!
アンテロープキャニオン
アンテロープキャニオンとは?
アメリカ合衆国アリゾナ州に位置するアンテロープキャニオン。おそらく世界で最も有名なスロットキャニオンだ。

スロットキャニオンとは、幅のきわめて狭い渓谷のこと。水や風によって浸食された砂岩がトンネルのような地形を作り出している
アンテロープキャニオンがある場所は標高約1,300Mに位置する砂漠地帯。気温の変動が激しく、冬場は日中10度以下、夏場は40度近くにまで達する厳しい環境の土地だ。
アンテロープキャニオンの場所
アメリカ合衆国アリゾナ州にある湖畔の街『ペイジ』から車で15分。乾燥した岩山の隙間にアンテロープキャニオンの入り口が存在する。

この地域はアメリカ南西部の先住民である「ナバホ族」の土地であり、アンテロープキャニオンはナバホ族の聖地とされる。
最近では有名な観光地となったアンテロープキャニオンだが、観光ツアーが開始されキャニオン内に一般観光客が入れるようになったのは1990年代後半のこと。近年まで気軽に入ることは許されなかったのだ。

また、アンテロープキャニオンの北側に位置するユタ州・アリゾナ州の州境には「レイク・パウエル」と呼ばれる巨大な人造湖があり、レイクパウエルを中心とした半径230キロメートルの地域を「グランドサークル」と呼ぶ。
グランドサークルには数多くの有名観光地が密集しており、世界遺産である「グランドキャニオン」のほか、ヒーリングの聖地「セドナ」、「メサ・ヴェルデ」、「モニュメント・バレー」などが含まれている。今回紹介しているアンテロープキャニオンもグランドサークルの中の国立モニュメントのひとつだ。
アンテロープキャニオンの構造
アンテロープキャニオンの大きさ
アンテロープキャニオンはアッパーアンテロープキャニオンとロウワーアンテロープキャニオンという2つの渓谷から構成されている。

アッパーアンテロープキャニオンの長さは約150~200m。ロウワーアンテロープキャニオンはおよそ2倍の約400mほど。渓谷の幅は2~3mしかないのに対して、両岸の崖の高さは約36mもある。
アッパーアンテロープキャニオン
2つのアンテロープキャニオンのうち、より観光客に人気なのがアッパーアンテロープキャニオンだ。

アッパーアンテロープキャニオンはロウワーアンテロープキャニオンに比べて道幅が広く、平坦な道が続いている。水の流れによって作られた岩肌の模様は、別の惑星にいるかのような錯覚をもたらすだろう。
両岸には最高36mもの岩層がそびえ立っているが、頭上の開口部から差し込む光によってキャニオン内は思いのほか明るい。

限られた季節のうち、太陽が高く昇る時間帯にのみ現れる光の筋は『ザ・ビーム』と呼ばれ、幻想的な雰囲気を感じとることができる。
ロウワーアンテロープキャニオン
アッパーアンテロープキャニオンが平坦な道のりだったのに対し、ロウワーアンテロープキャニオンでは急な下り坂と狭い通路を進んで行くことになる。

以前はロープなどを使って岩山を登り降りする必要があったため上級者向けとされていたが、近年は階段などが整備されたことで観光客からの人気が高まっている。
道幅が狭く形状も入り組んでいるため、キャニオン内は薄暗い場所も多い。足を踏み入れれば地下の迷宮をさまよう冒険者になった気分が味わえるだろう。

アッパーアンテロープキャニオンは突き当たりまで進むと通って来た道を引き返す必要があったが、ロウワーアンテロープキャニオンは入口と出口が別になっておりキャニオンを通り抜けるように進む。
キャニオンの出口からは、自分が通ってきたキャニオンの開口部が見渡せる。地上から見下ろすキャニオンの裂け目は、自然の恐ろしさを感じられるだろう。
アンテロープキャニオンの光の矢『ザ・ビーム』
アッパーアンテロープキャニオンの目玉である人気スポットが、頭上から差し込む光が作り出す『光の矢=ザ・ビーム』。4月〜9月という限られた期間のうち、日中11時〜13時の間にしか現れない珍しい現象だ。

頭上の開口部から差し込む太陽光が、キャニオン内に舞い上がる砂埃に反射することでキラキラと幻想的な光を放つ。
光の矢が現れるシーズンになると、この美しい風景をカメラに収めようと多くの観光客が訪れる。最も写真撮影が行われる観光スポットと称されるほどだ。
アンテロープキャニオンでは鉄砲水が危険?
本来、アンテロープキャニオンは、現地民のナバホ族の言葉で「水が岩を流れる場所」と名付けられた場所だ。

現在でも時として大量の鉄砲水がキャニオン内に注ぎ込むことがあり、過去には洪水による犠牲者も出ている。
シーズンには観光地として賑わうアンテロープキャニオンだが、実は大変危険な場所でもあるのだ。

アンテロープキャニオンへと観光に行く場合は、例え天候に恵まれていたとしても上流の天気にも注意が必要であるとこを忘れてはならない。