「人は見かけによらぬもの。」とは昔からある言葉ですが、これは人に限ったことではないようです。
今回紹介するのは『ギンピーギンピー』という植物。見た目はそこらに生えているような普通の植物ですが、触れたものには想像を絶する痛みを与える超危険植物です。
ギンピーギンピー
ギンピーギンピー(ギンピ・ギンピ)とは、イラクサ科イラノキ属というグループに分類される植物ー。2mほどの高さに20cmほどの葉を持つ見た目は普通の植物です。
イラクサ科の植物には毒を含んだ刺毛を持つ植物が多く存在していますが、ギンピーギンピーも例外ではありません。ギンピーギンピーの葉や枝などには毒性の強い刺毛が備わっており、触れた者に強烈な痛みを与えます。
英語では「刺す者」を意味するスティンガーという別名でも呼ばれており、古くから危険な植物とされてきました。
ギンピーギンピーの毒と危険性
ギンピーギンピーの最大の特徴は、やはりその危険性。
ギンピーギンピーの葉や枝には、グラスファイバーのような細かい刺毛がビッシリと生えており、軽く触れるだけでもおびただしい量のトゲが皮膚に突き刺さります。このトゲの先端部分に含まれる人体に有害な神経毒が激痛の原因とされ、一度刺さった微細な刺毛は皮膚に食い込み、取り除くことすら困難と言われています。
刺毛が刺さってしまった場合、薄めた塩酸の塗布やワックス脱毛などにより刺毛の除去が行われますが、この時に刺毛を破壊してしまうと、体内に残った破片によって長期間の激痛を味わうこととなります。実際に負傷した人の話によると、最初の2-3日間の激痛の後、眠れないほどの痛みが約2年も続いたそうです。
ちなみに、オーストラリアの開拓時代にイギリスの探検家によって採取されたギンピーギンピーの葉が大英博物館に保管されているそうですが、このカラカラに乾燥した200年以上も前の葉であっても触ると怪我をしてしまうといいます。
あまりに強烈な威力を持つことから、第二次世界大戦時のイギリス軍ではギンピーギンピーを軍事利用できないかという案もあったそう。ギンピーギンピーの刺毛を空気中にばらまけば、呼吸の際に肺に吸引してしまいます。最終的に、この計画は未遂になったそうですが戦争の際の人間というのは本当に恐ろしいものですね。
ギンピーギンピーの分布と自生環境
これほど危険な植物ですから、私たちの住んでいる日本にも生えているのか気になります。ここではギンピーギンピーの自生地について見ていきましょう。
ギンピーギンピーの自生地
ギンピーギンピーはオーストラリアを原産とする植物です。
北東部に位置するクイーンズランド州に多く群生しており一般的な植物とされていますが、南部の地域では希少な種となっており、ニューサウスウェールズ州では絶滅危惧種に指定されています。
この地域は、夏場の気温が40℃近くまで達するような温暖な気候で、この熱帯地域特有の熱帯雨林が広がっています。
ギンピーギンピーは熱帯雨林の中でも比較的陽の当たりやすい境界部に多く自生しており、人の生活圏のすぐ近くに存在しています。
日本にも生えている?
気になる日本での危険性ですが、ギンピーギンピーが日本に自生しているという情報は得られませんでした。おそらく日本には生えていないものと思われます。
ただし、ギンピーギンピーが属しているイラクサ科の植物は日本にも多数存在しています。
イラクサ科の植物には同じような刺毛を持つ危険なものが多いため、ギンピーギンピー程ではないにしても注意が必要です。
ギンピーギンピーを攻略した生物もいる
これほど恐ろしいギンピーギンピーですが、ギンピーギンピーの刺毛や神経毒が全く効かない生物も多く存在しています。
アカアシヤブワラビーのはく製
オーストラリアで独自の進化を遂げたアカアシヤブワラビーなどの数種類の小型哺乳類のほか、虫や鳥類など一部の動物は痛みを感じるどころか刺毛がびっしりと生えた葉を難なく食べてしまいます。
一方でオーストラリア固有の生物以外には猛毒の効果を発揮するらしく、かつてのオーストラリア入植時代には放牧中の馬が刺されてショック死するといった事故も起こったそうです。
果実は食べれるらしい
一度触れるだけで数か月も苦しむことになる恐ろしい植物ギンピーギンピー。
かつて、トイレットペーパー代わりにギンピーギンピーの葉でお尻を吹いてしまった人が、あまりに苦しみに自殺してしまったこともあるのだとか・・・。想像するだけで辛いですね・・・。
ギンピーギンピーの果実。意外と可愛い・・・。
しかし、そんな恐ろしいギンピーギンピーですが、実は果実が食べれるそう!
ただし、果実の表面にもびっしりと刺毛が生えそろっているらしいので、かなりリスキーな食べ物なようです。
怖いもの知らずの方がいたらオーストラリアで食してみてはいかがでしょうか?