世界には珍しい宝石や鉱物が色々あるけれど、今回紹介するオケナイトは、石コロの中でも群を抜いて奇抜な見た目。フワフワ感触の奇妙な石だ。

完全にファンタジー系ゲームのアイテムか魔物にしか見えないけれど、れっきとした鉱物。
今回は、『オケナイト(オーケン石)』に生えているフワフワした毛の正体や、触った時の感触、オケナイトが採掘される産地などついて紹介していこう!
オーケン石(オケナイト)とは?
オケナイト(Okenite)とは、インドのデカン高原から産出されるフワフワとした毛のようなものが生えた奇妙な鉱石。別名オーケン石。

見た目は石に見えないけれど、ケイ酸塩鉱物というジャンルに分類されるれっきとした鉱物だ。

オケナイトは、そのウサギの尻尾のような見た目から『ラビットテール』とも呼ばれている。そう言われると確かに、洞穴の中に隠れたウサギの尻尾が見えているようにしかみえない。

フワフワした奇妙な姿から、日本に伝わる妖怪「ケサランパサラン」の正体なんていわれることもある。かつてケサランパサランが大ブームになった際に、メディアがオケナイトをケサランパサランとして紹介したことで、日本でも広く知られる鉱物となったようだ。
オケナイトは産業用としてはあまり使い道のない鉱物だけど、その可愛い見た目と不思議な雰囲気のお陰で、鑑賞用やパワーストーンとしての人気が高い。
フワフワの毛の正体
オーケン石に生えた毛の正体は、ガラス状の繊維が放射状に伸びたもの。このモコモコは『コットンボール・クラスター』と呼ばれている。

オケナイトの毛はガラス繊維で出来ているということで、触るとチクチク刺さるという人もいるけれど、実際に触った人によると「オケナイトの毛はビロード(絨毯)のような感触」だったそうだ。
動物の毛並みのようだけど、あまり強く触ってしまうと型が付いてしまい元に戻らなくなる。当たり前だけど、オケナイトは石なので一度壊れた繊維は復活することはない。触る機会があった場合は細心の注意が必要だ。

Rob Lavinsky, iRocks.com CC BY-SA 3.0
見た目が似ているふわふわの石にアルチナイト(アルチニ石)という鉱物もある。アルチナイトの結晶の繊維は、オケナイトに比べてポキポキと折れて刺さりやすいらしく、感触もオケナイトとは全く違うようだ。
オケナイトができるまで
オケナイトは、溶岩内に発生した「気泡や水泡」などの空洞によって成形される。

溶岩の流れによってできた空洞が固まったのち、熱水循環と呼ばれる作用で空洞内に熱水が侵入する。
その熱水の作用によって、ミネラル分が結晶化することで、晶洞の内部(石の空洞)を覆うようにフワフワのクラスターが形成されるそうだ。
オーケン石の名前の由来
オーケン石という名前の由来は、19世紀に活躍したドイツの自然科学者『ローレンツ・オーケン』にちなんでいる。

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このローレンツ・オーケンは、近代の「自然科学」が発展する以前に主流であった「自然哲学」という学問の指導者だった。
ローレンツ・オーケンは「動物界は一つの有機体であり、人間が最高の段階で、野生動物は人間の胚発生の各段階に対応する形態をもつ」という主張をしていた。

現在の常識である進化論を知っている僕たちからすると、ちょっと理解できないけれど、いかにもファンタジーな感じがオーケン石にもピッタリだ。
ちなみに、オーケンは「海水の中に原始粘液体が生じ、それが小胞となって、すべての生物の源となった」とも主張している。この主張は、現在最も有力視される「生命の起源の仮説=化学進化論」を見事に言い当てている。
ソ連のアレクサンドル・オパーリンによって「有機物による化学進化説」が最初に唱えられたのが1922年なので、オーケンは100年近く前に同じ事を言っていたことになる。すごいぜオーケン!