オパビニア
1900年代初頭…カナダ「バージェス山」の約5億500万年前の地層から奇妙な化石が発見された。5つの眼、口から生えた長い触手のようなもの、さらに触手の先にはハサミが付いている 。
このあまりに奇妙な化石はオパビニアと名付けられ、古生物学者たちを悩ませる存在となったのだ。今回は未だ謎の多いカンブリアモンスター「オパビニア」をピックアップだ!
オパビニアとは?
オパビニアとは、今から約5億年以上前のカンブリア紀に生息していた海洋生物。頭部には5つの眼とハサミのようなものが付いた長い触手を持っている。

カンブリアモンスターと呼ばれ、奇怪な姿をしたものが多く存在するカンブリア紀の生物たちの中でも、群を抜いて奇妙な身体を持っていた。
古生物の復元図では必ず登場するほど有名な生物でありながら、実は化石の発見数が少ないため、生態や体の構造をめぐって未だに議論が続いている。
生息した時代
1900年代初頭、バージェス頁岩と呼ばれる地層からオパビニアの化石が発見された。

この地層はカンブリア紀と呼ばれる約5億500万年前のものと考えられており、同時期に生息した古生物には、有名なアノマロカリスやピカイア、オットイア、ハルキゲニアなどが名を連ねている。
当時は、海洋が地球全体を覆いつくしていたが、すでに海中では様々な生物が現れていた。現生の生物であるクラゲの直接の祖先など、すでに誕生していた生物も少なからずいたようだ。
身体の特徴
オパビニアがこれほど注目を浴びてきたのは、やはりその独特な見た目によるものだろう。ここではオパビニアの奇妙な特徴についてみていこう。
大きさ
これまでに発見された化石では、オパビニアの体長は4-7㎝程度しかなかったことが分かっている。

Matt Martyniuk CC 表示-継承 4.0
アノマロカリスは体長1mを超えるものも存在していたため、形の似たオパビニアも巨大なイメージがあるが、それほど大きいわけではないらしい。
いままで発見されている同時代の生物は数㎝程度の生物がほとんどであり、アノマロカリスが特別大きな生物だったようだ。
5つの眼
オパビニアの頭部には3つの丸い目が確認できる。前方に三角形を描くように3つの眼が付いており、斜め後方に1対の少し大きな眼が配置されている。

5つの眼を持っていたことで、上方に360°もの視野を確保していたようだ。高性能な眼を持ったことで捕食者に一早く気づき、身を守ることができたと考えられている。
胴体とヒレ
15節からなる細長い胴体側面には、アノマロカリスと同じようなヒレが確認できる。ヒレの表面にはクシ状の付属体が付いており、エラの役割を果たしていたと考えられている。

胴体腹部にはムカデのような脚がついていたという説もあるが、研究者によって意見が分かれているようだ。
触手と口
頭部前方には高い可動性を持った触手が備わっており、先端にはトングのようなハサミが付いていた。

ハサミには5-6本の棘が確認できることから、ハサミで獲物を掴んで口まで運んでいたと考えられている。
口はハサミに付いているわけではなく、頭部の下側に後方に向かって付いていた。獲物を掴んだ触手をぐるりとUターンさせて食事をしていたようだ。
ちなみに、ハサミは上下に開くのではなく左右に開いていたらしい。このことから、アノマロカリスのような左右に分かれた2本の触手が、先端を残して繋がったことが分かる。
解明されないオパビニアの謎
オパビニアの化石が発掘された当初、その異様な姿から現在の動物の分類には収まりきらない謎の生物とされ、数々の議論を巻き起こした。
そのため、同時期に生息していたアノマロカリスと同じく、「奇妙奇天烈動物(weird wonders)」の代表的な一種として紹介されてきた歴史を持っている。
その独特な姿は現在のどの動物にも似つかないと考えられ、「動物界の孤児」と例えられることもあった。
研究が進んだ現在では、オパビニアは初期の節足動物の一種であったと結論付けられているが、この結論に対する反論も多く、詳しい生態や分類は未だに分かっていないようだ。