その時代に存在すること自体ありえない「オーパーツ」。古代の壁画に描かれた飛行機の絵や、恐竜を知るはずもない大昔の人々が作った恐竜の土偶など・・・。オーパーツがもらたしてくれる『未知という魅力』は私たちの心を惹きつけてやまない。
しかし、科学の発展やネットの普及とともに、これまで『謎』とされてきた多くのオーパーツのウソやねつ造、勘違いが明らかになっている。ファンのあいだでは「オーパーツ解明され過ぎて終わる…」なんて悲しむ人もいるほど。
今回は「それが何だったのか解明された」9個のオーパーツを紹介しよう!
解明されたオーパーツ
ハトホル神殿の壁画「デンデラの電球」
エジプトにある遺跡群「デンデラ神殿複合体」。その中の一つであるハトホル神殿には巨大な電球を持つ人が描かれた壁画が存在しており、古代人が電球を使用していた証拠とされる。
人が抱えた巨大な物体が、蛍光灯の先駆けであるガイスラー菅やクルックス管に酷似しているというのだ。
しかし実際には、この壁画はエジプト神話に登場する「ヘビを内側に産むハスの花」を描いたものであるとされている。よく見ればフィラメントのようなものの先端部分には目が描かれており、ヘビであることが確認できる。
現在でもエジプト考古学者たちは、明らかにヘビである壁画を電球であると主張する一部のオカルト研究者に頭を抱えているそうだ。
バグダッド電池
バグダッド電池とは、現在のイラク-バグダッドで発見された奇妙な土器だ。
1932年、古民家の遺跡から発掘された大きさ10㎝ほどの粘土製の壺の中に、アスファルトで固定された銅の筒が入っており、その中にアスファルトで塞がれたシリンダーの中に鉄製の棒が差し込まれていた。また、何らかの液体が入っていた形跡があったという。
この構造が電池に酷似していることから、昔の人々が電力を生み出す方法を知っていたとして、この土器もオーパーツの仲間入りとなった。
現在でも一部で論争が続いているものの、この壺は「電池では無かった」という説が有力となっている。
中にあった鉄製の棒は巻物の芯であり、銅の筒は保護するための容器だったようだ。また、内部に残っていた液体の痕跡は、当時紙の原料となっていたパピルス草が腐ったものであり、実際にパピルス草の繊維も発見されている。
クリスタルスカル(水晶髑髏)
最も有名なオーパーツの一つであるクリスタルスカル。これまでに十数個が発見されている。『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』で登場したことでも有名となった。
マヤ文明やアステカ文明、インカ帝国といった中南米の考古遺物として発掘され、とても割れやすい一つの水晶から作られており道具による加工痕すらないとされている。
クリスタルスカルの所有者たちは、現代の技術を持っても作ることは不可能であると主張しており、様々な神秘的な現象を引き起こすと言われている。
だが、所有者たちの主張には一貫性がなく、「クリスタルスカルを13個集めると宇宙の謎が暴かれる」といった信憑性に欠ける噂まで存在している。
すべてが偽物であると判明したわけではないが、その多くが後の検査によって、道具による加工痕や複数のパーツをつなげた繋ぎ目が見つかっており、19世紀末に作られたものであることが判明している。
バールベックの巨石
バールベックの巨石とは、中東レバノンにある宗教都市バールベックで、世界遺産として登録されているジュピター神殿の土台として使われている巨大な切石だ。
重さは650t~950tとされており、現代の機械ですら運ぶのが困難なためにオーパーツと称されることがある。
イギリスBBCの番組で放送された、「1tの切石を1マイル動かすのに16もの人が必要になる。」という実験結果から、「バールベックの巨石を動かすためには15000人必要になるため、どのように動かしたのか謎である」とされている。
しかし、1日に1マイルもの距離を動かす必要がなければ、もっと少ない人数での運搬が可能だ。実際にロシアのピョートル大帝像「青銅の騎士」の土台は1350tもあるが、人力で3年かけて6㎞の距離を動かしている。
また、「バールベックの巨石」がオーパーツとして紹介される際には、石切場に放置されている「南の石」と呼ばれる巨大な切石の写真が掲載されることが多い。重さは1200t~2000tと推定されるが、こちらの石は動かされた形跡すらない上に、「バールベックの巨石」という名称ではないので注意が必要だ。
コソの点火プラグ
アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるコソ山脈から1961年に発掘された古代の点火プラグが「コソの点火プラグ」だ。過去には博物館に展示されていたこともあり、世界的に有名となった。
プラグを覆っていた石化した土の年代を地質学者が調べたところ、50万年も前のものであることが判明したと言われている。
しかし、2000年に発表された内容によると、点火プラグコレクターたちによって行われたX線検査により、「1920年代にアメリカのチャンピオン社で製造された点火プラグに間違いない」という結果が出ている。
50万年前の土で覆われていたという主張も発見者の一人が行っているだけであり、鑑定を行った地質学者が誰であるのかも分かっていないようだ。
ちなみに、現在ではコソの点火プラグの行方は分からなくなっており、写真しか残っていない。
カブレラストーン
カブレラストーンとは、南米の内科医であるハビエル・カブレラが所有している1万5000点以上にわたる彫刻石のコレクションだ。その中に恐竜と人間が共存している絵が見つかったためオーパーツと呼ばれるようになった。
恐竜の存在が知られるようになったのは1822年にイグアノドンの化石が発見されて以降であるため、カブレラストーンが古代の彫刻であれば、かつて恐竜と人間が共存していた可能性が出てくるのだ。
オーパーツと呼ばれるようになった当初から、彫刻の痕が鋭いために古いものではないとの主張が存在したが、後にイギリスBBCの取材に対し石を作った本人が名乗り出たために偽物であることが確定した。
石に歯科用の器具を使って彫刻を施したのち、靴墨や動物のフンを塗り、火であぶって古い雰囲気をだしたそうだ。
コロンビアの黄金ジェット
コロンビアの黄金ジェットは、黄金スペースシャトルともよばれ飛行機や宇宙船を連想させる黄金細工。
西暦500~800年以前のコロンビアで作られたと考えられており、もし黄金ジェットが飛行機をモデルにして作ったとすると、過去に飛行機を作れるほどの超文明が存在した証拠となる。
丸みを帯びた流線型のフォルムは航空学的にも理にかなっており、黄金ジェットを模したラジコンでの飛行実験にも成功している。これによりオカルトメディアでは「古代に飛行機が存在した証拠だ」と主張されてきた。
しかし、これらの主張は説得力に乏しいようだ。飛行実験で使われた黄金ジェット型ラジコンは空を飛べるように翼が大きく作られていた。見た目が似ている普通のラジコンを飛ばしていただけだったのだ。
さらに、黄金ジェットと呼ばれるものは数多く発掘された黄金細工のひとつにすぎない。同時期には魚や昆虫をモデルにした黄金細工が数多く作られている。つまり、様々な形をした黄金細工の中から飛行機に似ているものを「オーパーツ」としてピックアップしただけなのだ。
結局のところ、黄金ジェットのモデルとなったのは、現地に多く生息しているプレコという魚や、現地に伝わる神話上の生き物という説が有力なようだ。
古代エジプトのグライダー
古代エジプトのグライダーは、今から2000年以上前の古代エジプトにグライダーが存在していた証拠として取り上げられるオーパーツだ。1969年、カリル・メシハ博士によってグライダー説が提唱されオーパーツとして一躍有名になった。
軽量であるイチジクの樹から作られたボディは、人が乗れるサイズであったとしても空を飛ぶには十分な軽さであるとされ、カリル・メシハ博士の行った飛行実験ではかなりの距離を滑空することに成功したそうだ。
しかし、現在では古代エジプトのグライダーは、飛行機やグライダーをモデルにした模型ではないという説が有力だ。
そもそも、この模型が発見された当初「これは鳥の模型だ」とされていた。模型を前方から見ると目やクチバシが確認でき、鳥をモデルに作られた模型であることは明白である。
ちなみに、カリル・メシハ博士は博士号を持ってはいるものの、考古学者ではなく医学博士であり、考古学の研究は趣味で行っていたという。また、この模型が発掘された場所は、紀元前200年前後のプトレマイオス朝時代の墳墓であり、時代区分としては古代エジプトの出土品ですらないらしい。
ただし、この模型が何に使われていたのかについては未だ解明さえておらず、子供のおもちゃ説や風向きを知るための風見鶏説、ブーメラン説、神聖な船のマストの頂点に飾られる装飾品説などが存在している。
アビドス神殿の壁画
エジプトにある古代遺跡「アビドス神殿」。エジプトの神殿の中でも最も美しい物の1つと讃えられるこの神殿の壁には、存在するはずのない近代兵器が描かれているという。
確かに、言われてみると軍事用のヘリコプターや潜水艦などが確認できる。
このオーパーツが注目されることとなったのは1997年のこと。この遺跡を見学しに来ていたブルース・ローレンスという研究家がこの壁画に興味を持ったことに始まる。彼の撮影した写真がアメリカで報道されると、エジプトに古代兵器があった証拠としてオカルト誌などで取り上げられ世界的に有名となった。
しかし、この壁に描かれているものは近代兵器などではなかったようだ。
古代エジプトでは王が変わるたびに壁に刻まれた文字を掘りなおすことがあるらしく、この壁に刻まれたヘリコプターのような絵は、文字を刻みなおした際に二つの文字が重なってできた偶然の産物だったらしい。
ヒエログリフを読むことのできる考古学者からすれば、どこがヘリコプターに見えるのか逆にわからないそうだ。ただ、偶然にもこのような絵が3つも完成するというミラクルは、なかなか起きないだろう。オーパーツではなかったとしても興味深い壁画だ。