美味しそうなものに限って床に落ちてしまうもの。この残念過ぎる事実に対抗すべく、人類が開発した裏技が『3秒ルール』だ。
人によって5秒ルールや10秒ルールなどのバリエーションがあるらしいが、みんなが言いたいことは一つ。

「地面についた時間が短ければ、食べ物は安全に食べられる!!」
実際のところ、3秒ルールを適用することで「食べ物の衛生度は保たれる」なんてことがあるのだろうか?今回は「3秒ルール」は本当なのか実際に行われた研究の実験結果を紹介していこう。
3秒ルールとは?
3秒ルールとは、食べ物を地面に落としてしまった場合に「3秒以内に拾うことが出来れば汚くないので食べられる。」という言い伝え。時と場合によっては15秒ルールにまで延長されることもあるようだ。

一説によると、日本で3秒ルールが生まれたのは1970年代のこと。学校給食が浸透しつつある時代に児童たちが生み出した技だったらしい。また、海外でも同じような趣旨の「5秒ルール」が存在しており、日本以上に幅広い年代で使われているのだとか。
ちなみに3秒ルールがアイスやジャム付きのパンなどの粘着性のある食品に適用されることはほとんどない。
3秒ルールの使い方
友人からもらった食べ物を目の前で落としてしまった場合など、双方に気まずい空気が流れる危険性がある。そこで使えるのが「3秒ルール」である。

食べる側の人間が落下した食品を即座に拾い上げ、3秒以内に拾ったので大丈夫であることを高らかに宣言し、躊躇せずに食べてしまうのだ。これによって、受け取った人・落としてしまった人の双方が、申し訳ない気持ちにならずに済むという訳だ。
ただし、3秒ルールを口にできるのは「落ちた食品を食べる側の人間だけ」である。食べない側の人間が3秒ルールの効力を発揮する行為はただの嫌がらせになる可能性が高いので注意しよう。
3秒ルールに関する研究結果
この3秒ルール(5秒ルール)は本当に正しいのか?といった疑問を解決すべく、世界中の研究チームが実験を行っている。ここでは各国で行われた実験結果を紹介しよう。
乾いた床は比較的安全!?
2003年、当時高校生だったジリアン・クラーク君は、イリノイ大学内の様々な床のサンプルを採取し顕微鏡で調べるという研究を行った。
その結果、乾いた床の大部分は危険なバクテリアを含んでいないため、比較的安全であるということが分かったそうだ。

一方で大腸菌を床にばらまいてグミやクッキーといったお菓子を落とすという実験では、5秒以下という短時間で相当な数の大腸菌が食品に付着したという。
結論として「食品が落ちた場所がきれいな床であれば安全」という事になる。
余談ではあるけれど、クラーク君はこの研究の功績が認められ、2004年度の「イグノーベル賞」を受賞している。
床に付着した時間は無関係
2007年に米国クレムゾン大学が行った研究では「食べ物と床が接触する時間」と「食べ物に付着する菌の量」の関連性を調べる実験が行われた。
サルモネラ菌がついた「タイル・カーペット・木の床」の3種類の床に、5秒・30秒・60秒とソーセージとパンを置き、経過を観察した。

結果は「床に落ちた時間が何秒であろうが付着するものは付着する」という内容だったようだ。むしろ、落とした場所の清潔さの方が重要との見解を示している。
この実験では、食べ物をカーペットに落とした場合は1%程度の汚染であるが、タイルの場合は48%、木材では70%程度のばい菌が付着するということが分かっている。
塩分や糖分が含まれる食品は安全?
2012年に英国メトロポリタン大学が行った研究では、「ジャム付きパン・パスタ麺・生ハム・ビスケット・ドライフルーツ」などを床に置き、バクテリアの付着量を調査した。

その結果「生ハムやジャムなどの塩分や砂糖を多く含有する食品ほど汚染されにくい」ということが分かった。一方でパスタやドライフルーツからは敗血症の原因となるクレブシエラ菌が検出されたそうだ。
注意しておきたいのは、この研究が普段から清掃された床で行われた結果だということ。公共の場所や汚染の可能性が高い病院などでは全く異なる結果になっていただろう。
結論:掃除が大事
様々な研究結果から分かるように、食べ物が落ちた時間というのは食品の危険性にはほとんど関係が無く、「どこに落ちたか?」の方が重要なようだ。

結局は床をいかに清潔に保っているかが重要。掃除をあまりしていないような場所では、落ちた時間が何秒であろうとを食べない方が賢明だろう。
ただ、「それでも3秒ルールを信じたい派」を一応フォローしておくと、これらの実験は土足文化の根強い国で行われている。世界的に見てもキレイ好きの多い日本であれば多少はマシなんじゃないのかな?(適当)